3 / 11

第3話

春の先立ちをする梅の香りに誘われて来た公園はまだコートがいったな。 手には彼の髪の触感が焼きついている。 どこが跳ねるか、どこにつむじがあるか、疲れていないか、ちょっと欲求不満だったりする? 本当は今すぐにでも彼の全てを手に入れたい。求められ震える身体でお願いと強請らせたい。 常連のお客にシザーカットの途中、滑りそうになった指先にハッとする。 鏡の中の物欲しそうな貌。 夢中になってるのは俺の方? 少し頭を冷まそう。座るベンチの冷たさに彼をまた思い出すしようもない指先。 no.3 honolulu Twitter@honolulu5565

ともだちにシェアしよう!