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第4話
顔を上げると、通りを挟んだ向こうから彼が駆けてくるのが見えた。
見間違えてなんかいない。
「近くまで、来た、から」と息を切らし、肩を上下させて微笑む。
一秒前にも思い出していた。
初めて部屋に来てくれた時、いつもとは違う仕草で上着を脱いで、ボタンをはずして、俺の腕をとってくれたきみを。
「今夜、お店が終わる頃に、行ってもいいですか。あ、その前に髪を切ってもらわなくちゃ」
長くなった前髪を掻き上げながら、彼が口元をほころばせた。
その瞬間、胸のあたりで渦を巻いていたものがゆっくりとほどけていった。
no.4 boly
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