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第6話
いかがですか、と揶揄うような声でようやく、鏡の中の自分に焦点が合った。
「あ……」
どうして?
問いかける視線に彼はただ微笑む。
「だって、ほら」
短くなった襟足に指先を滑らせ、そこに掠めるような口づけが落とされた。
若草の瑞々しいトワレに苦味のある煙の香りが微かに混ざり、僕をふわりと包み込む。
たったそれだけで、身体の奥底から次々と甘い期待が芽吹き始める。
鏡越しに熱を帯びた視線が交わった。
No.6 Cieli
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@CieliEMare
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