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第9話
じわりと口内に広がる煙草の味に舌が痺れる。
その感覚に誘われて腕を回そうとしたら唇が離れた。
言葉はとうに失って、彼の綻ぶような笑顔を見つめることしかできない。
春とはいえ肌寒い夜、あなたの肌に触れたいだけなのに。
大きな掌が黙ったままの背中を押して部屋に促す。
僕の躰のいろんな窪みに触れた指先がひとつづつボタンを外してゆくのを見ていると、見透かしたような笑顔で
「何考えているの?」
そんなこと、あなたに言える訳ない。
No.9
蜜鳥
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