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小さな冒険

その夜、もう一度あの家に向かった。 いつものように九時に寝かされてから、そっと布団を抜け出して寝間着の上に学校指定のコートを羽織る。秋の夜風は冷たい。 靴を履き、部屋の窓を開けてそっと身を乗り出す。下に誰もいないことを確認してから、窓の近くに伸びている木の枝に掴まった。音を立てないように、慎重に体を下へ下へと移動させる。 最後少しの高さを飛び降りて、僕は素早く裏庭へ向かった。あの家にたどり着くには、三つもの庭園を渡り歩いて、さらに丘を一つ越えなければならない。 幼い僕は、まるで本に出てくる冒険者気分だった。昼間あの家から逃げ帰ったことも忘れて、うきうきとして小さな夜の冒険を楽しんだ。 やがてーーあの家へとたどり着く。 家は、二階だけに灯りが点いていた。 僕は、昼には気づかなかった、家のそばに立つ木へとそっとよじ登った。おそるおそる、窓の中を覗く。 すると、昼に聞いたあの声がすぐ近くでして、僕は危うく木から滑り落ちそうになった。 「こんばんは!」 夜闇にも紛れられない、白く輝く天使が至近距離で無垢に笑っていた。

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