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第16話

*******  オレは荷物をまとめ、車に揺られていた。もう縁を切ったハズの実年齢は上だけれど階級はオレより下のヤツに、連絡をとった。度々車の運転を目当てに連絡は取る間柄。  この前の一件から咲良ちゃんには注意しようと思った。それなのにまたサック~は。  家庭の事情。だからオレには何の力にもなれない。そう思ってしまった。でもまた何かされたとき、助けられるのってオレしかいない。助けたいって思ってるのってオレしかいないと思った。  だから色々な想いとか振りきって、サック~を探しにいった。  途中で会った咲良ちゃんに居場所を教えてもらった。  それなのに。  青臭い、嗅ぎ慣れたような、けれどどこか嫌悪感の否めない匂いを纏わせ、彼は言った。             「もう一緒に居られないんだ」   もう一緒に居られない?どういうコト?どこか行っちゃうの?笑って嘘だよ、とは言ってくれないの?             「俺はお前が大嫌いなんだ。昔からずっと迷惑だったんだよ」   力の無い声で、そう言われた。もう我慢の限界だとも。   殴られたみたいに衝撃的で酷く傷付いたけれど、それ以上にきっと傷付いていたのはサック~。         「くだらないお前の過去に付き合わされて、巻き込まれて」   申し訳ない気持ちでいっぱいになった。けれど、あまりに悲しそうに、申し訳なさそうに、困ったように言うものだから、まだ自分が隣にいてもいいという錯覚すらする。              「お前と関わると、ホント、碌なことないね」   何か大切なものにヒビは入っていくようだった。守るって誓ったのに。守る資格すらなかったなんて。   その日、オレは授業を全てサボった。   荷物を纏めて、出て行く為に。   帰り道は、酷く淋しかった。   サック~が居ないと、遠いんだな。   半端な時間だったから、電車は空いていた。         「もう俺の前に、姿を現さないでくれ。不愉快なんだ」   一番最後に言われた台詞。痛かった。サック~より自分を優先させたかった。    ぽつっと涙が溢れた。    結局俺は誰にも愛される事が無い。この先も。   結構期待、してたんだけどな・・・・・    サック~のコト、何も分かってやれなかった。図々しく甘えていた。   サック~とのコトを思い出すと、ぼろぼろと涙が溢れてきた。    いい年した高校生が電車内という公共の場で泣くのは目立ったか?    痛い。痛い・・・・。痛いよ・・・・    オレの中心にサック~がいて、その周りに学校があって生活があって。   どうしてそこまで嫌われた?ふざけ過ぎた?気付かなかった    もとから、怪我してあそこに居座るコトになった時から?   オレといた所為で咲良ちゃんと仲直りできなかった?   巻き込んじゃったから?  オレがどうしようもないヤツだから?   ふと我に返れば、もう家に着いていた。   はやく自分の荷物を纏めて実家に帰ろう。    いつもサック~が綺麗にしてくれている・・・・・。いつも綺麗にしてくれているから、この部屋は清潔感溢れている。   出来るだけ、オレの色を残さないように。    オレの部屋は大きいし広い。   机の上のガラクタ。面白そうで買ったペットロボット。    引き出しを漁れば、学力低くても素行が悪くても行ける高校のパンフレット。そうだ、高校も転校かな。   スポーツ特待で三校から書類来たんだけど断ったんだっけ。   なんて適当にダンボールに詰め込んで、車の免許を持った昔の部下が来ていないか窓から確認した。   案外私物は少なかった。   殆ど共同で買ったから。   元部下が到着して、玄関を出る時に、ふと目に入ったのは、リビングにあった二人で行った大きなテーマパークの写真。    二人で肩を組んで笑ってる。虚しい。    手を伸ばしてやっと届いた写真。テレビの上に置いてある。    静かに伏せて、部屋を見渡す。   「さよなら」と呟き、出て行く。        「そしてありがとうございました」  “今の”自分はここで始まったんだ。

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