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第18話

**   こっちの学校でも不自由は無かった。校則が前の学校よりちょっと厳しいくらい。   オレの髪は男にしては長いから、ヘアゴムを三条に貰うと一つに縛った。耳と項が隠れるくらいなんだけどね。   新しい生徒手帳の6ページに目を通しながら髪の処理をしだす転校生に、中学一緒じゃなかった奴等は訝しい目でオレを見ている。・・・・自意識過剰じゃないよ。 「さんじょぉ」 「何?」 「オレも委員会入るんだよね?」 「基本的には全員入るコトになってるわね」 「部活は?三条、何部?」 「あ、あたしはバドミントン部」 「どうしよっかな、オレ・・・・。前は入ってなかったからこっちでは入ろうかな・・・・、今頃だと厳しいかな」 「文化部にすれば?」   生徒手帳の8ページから27ページまで委員会と部活についてくどくどと書かれている。 「これでもさ、部員の助っ人で三塁手で一回試合出たんだぜ?」 「マジ?頑張ったじゃん」   三条の言葉も気にならず、それよか目を引いたのは、野球部が去年甲子園に行った事が書かれた一文。 野球は幼いころから好きだった。 「ここ、去年、甲子園行ったのかよ」 「あ、そうそう。行ったよ、あたしも。今大学生だけど、兄貴が野球部でさぁ」 「じゃぁ、兄ちゃんの代が行ったってコト?」 「・・・・・ここの野球部はね、実力重視なの。三年だろうが何だろうが、関係ないの。だから一年生がレギュラーも・・・・・」 「でも三条って投手有名だよ」 「・・・・・・それって、七那?」 「うん。三条七那投手」   生徒手帳を見つめながら話す。三条はちらちらとオレを見た。その仕草がどこかの誰かに似ている気がした。でも多分気のせい。 「フォークが凄いって。やってみてぇなぁ」  間を持たせる為に言葉を探した。  「ねぇ、隼汰」 「な。何?」 「見てみたかったな」 「何?一緒に映画?」 「何処の何方がそんなに貴方を気にさせるのか」   からかい半分で三条が言った。 「え・・・・?あ・・・?」 「なんか悔しいわね」 「ごめん」 「いいの。隼汰がその子のコト好きなら」 「好きだよ。ずっと好きだった。でもね・・・・」 「好きってキモチに、でも、はないよ」 「・・・・・うん」   オレもなんかいろいろと迷ってる。     どうしたらいいかとかもう分からないし。だからって三条に頼るのはむしがよすぎるだろう。 「でも、あたしは、隼汰のコト、本気だったな」 「ごめん」 「別に隼汰の謝るコトじゃないよ」   三条に迷惑、いっぱいかけた。彼氏とか彼女とか、それ以前に。いっぱい。   三条いなかったら、学校へはもう行ってなかったかも。高校だって行く気なんて、最初はなかった。スポーツ特待に甘えさせなかったのも三条だし、オレのレベルに合った高校のパンフレット持ってきたのも三条。偶々その高校のパンフレットにあの人と同じ高校があったんだけどね。 「・・・・・・・」 「だから、相談なら乗ってあげる。お節介かも知れないけど・・・・隼汰には苦しんで欲しくない」   ごめん。ごめんな、三条。オレは、逃げて来たんだよ、ここへ。 「・・・・・」   オレは黙って頷いた。

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