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第20話
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「もう大城とは関わるな。破ったら・・・・・」
「犯すよ。咲夜を、じゃないから。輪姦させたっていいんだからね。最悪、殺してもいい」
ジュンタの過去の一部に触れた日の後日、咲良にあの黴臭い体育館倉庫に呼び出され、散々に犯された。散々に犯され、焦らされ、服従を強要され。
そしてその本題は、脅迫。
ジュンタが俺を探しにきた。この前みたいに俺をあやす。俺をあやして、慰めて。咲良はもうこの場にはいなかった。
また違う言葉を吐けば、俺はまだジュンタと一緒にいられるけれど。
ジュンタが俺みたいに誰かに犯されるのも、殺されるのも嫌で、どうしていいかも分からず、この葛藤をジュンタにぶつけるように、選んだ。
ジュンタはただいつものように情けなく笑って、「分かった」と言った。そうして「ごめんね」と言って、俺に背を向け、去っていった。
嘘だよ。行かないで。一緒に居て。言葉にできないから、察して。そう祈った。
俺はジュンタに悪い事をした。ジュンタを、傷つけただろうに。家に帰ったら、まず、どうしよう。今日は帰らないのがいいだろうか。
その場で泣き崩れて、寝ていた。もう放課後の時間だった。どこに向かうでもなく、引き寄せられるように屋上に向かった。ジュンタとサボる場所だから。
「咲夜」
緑のフェンスに寄り掛かっている、咲良の声だった。
「・・・・・・・咲良・・・・・」
さっきとはまるで違う人相だった。
「ごめん。ただ咲夜と一緒に居られたらいいなって・・・・・それだけでよかったのに。ごめん」
泣きそうな表情だった。
「・・・・・・・でも俺・・・・・・」
怒りを露わにする気も起きないくらい咲良は弱った様子。
「母上が、あんなんで、父上も同じ様な感じだろ?淋しくてさ・・・・。咲夜が居てくれたらって・・・・」
俯いて、スラックスを握る咲良。
「でも、俺、居ても居なくても、あの家じゃ、居ない存在だろ・・・・」
怒鳴りつけてやろうとする元気はなかった。
「可笑しな話だよな・・・・・。僕はアンタに、僕の存在を認めてもらいたかっただけのに。なのに僕、アンタの事、蔑ろにして・・・・それで・・・・」
なんだよ、それ・・・
「認めてもらってるのは、お前の方だろ。美弥子さんにも、礼司さんにも・・・。あの家はただのスパルタじゃねぇよ。二人とも、お前のコト、ちゃんと認めてる」
美弥子さんは実母で、礼司さんは実父。お前は息子じゃないんだから、母さんとも父さんとも呼ぶなと怒鳴られた記憶が蘇った。
「そうかな・・・・」
「じゃなきゃ、俺に家なんてくれねぇよ。お前が頼んでくれたんだろ」
「うん」
「美弥子さん、ホントに俺の事嫌いみたいだし」
「自分の子が憎い親なんて、居ないよ。きっと、母上も色々悩んで、それで・・・・」
「いいんだ。咲良。そうやって割り切って生きて来たんだから。今更許せる程、俺も温厚じゃねぇ。仕方無いのも分かってるけどよ・・・。ただお前は大嫌いだ。本当に・・・・・っ大っ嫌い・・・」
泣き落としなら、よそでやれよ。
ジュンタを俺から奪ったのだから、許せるわけ、ないだろ。
そして家に帰ると、お前は消えていた。
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