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第28話
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殴られて、蹴られて。「根性焼き」を無理矢理にやらされた。
右腕はきっと折れているだろう。右腕をバイクで轢かれた。
両手を縛り上げられ、天井から吊るされた大きなフックに掛けられている。ワイシャツはボロボロ。靴は元から履いていなかった。
顔面に冷たい感覚が残っているのは、集団私刑中に意識を取り戻すまでバケツで汲まれた水を何度もかけられていた。
目を開けば、よく青春ドラマなどで使われそうな不良が溜まっているような工場の片隅みたいな所だ。
静かで、家に置き去りにされた日を思い出す。
「・・・・居るんだろ?」
隼汰は口を開いた。
何の音も聞こえない。聞こえるといえば、自分の身体が振動する度に気付く心臓の音と、呼吸の音。
「居ないのか・・・・」
体中が痛む。
「痛い・・・なぁ・・・・」
ブチッ
何か切れる音がする、と感じたのと同時だろうか、隼汰の身体は地面に叩きつけられた。
コンクリートの冷たさ、砂埃の煙さ。フックに掛けられた縄が切れた音だった。
「がっは・・・・・」
砂埃を吸ってしまったのか、咳が出る。右腕に響き、痛みが走る。
両手の拘束は解けていないけれど、脚が折れているワケでは無い。
帰ろうと思い、立ち上がった。
集団私刑。自分は何度やったことがあっただろう。殺人を犯すのは嫌だったから、いつもギリギリで自分はやめて。卑怯だった。それに比べて、自分は脱退した時と、今日ので2回。たったの2回だ。
「痛い・・・・・」
目が痛くなって、視界が滲んで、きっとオレは泣いてるんだと気付いて、唇を噛み締めて、泣くまいと努める。
どうして?
あの人は居ないから、泣いたって大丈夫なのに。
あの人。弱さを絶対に見せたくない人。好きだから。
サック~は元気かな
もう会えないのか。
「会い・・・・・たい・・・・・・・」
嗚咽。鼻水を啜り。
でも咲夜が自分のコトを嫌いなのなら、仕方が無い。
遠くからバイクの音がする。
帰ってきたのだろうか?
暫くして視界に厳つい男たちが映る。
「目が覚めたかよ」
バチバチバチ・・・・
見慣れたスタンガンがその手に握られていた。
自分たちがよく使ったっけな。
健気に働くサラリーマンから金を巻き上げるために・・・・
情けない。
皮肉だ。
「あ゛ぐぅ・・・っ!」
激痛と強烈な痺れが背中を走る。
「お前は、一人の女を寄って集って意識不明にしたんだろ?当然の報いだよな?」
「同じ目に遭わせるか?」
「男じゃ萎えるっつの」
「挿れてみりゃ同じじゃね?」
好き勝手に話す男達。
鳥肌が立った。同じことをされるなんて――――
「あ゛ぁあ゛あ゛あ゛」
頭を踏みつけられ、地面に額を擦った。
「確か、両腕焼かれたんじゃないっけ?」
「ひぇ~鬼畜ぅ~」
「それで、目も抉ったんだっけか?」
同じことを、されるの――――?
「い゛やだああああああああああ!」
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