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第29話

********** 「大城先輩!」  フェンスの向こうから声をかけてくる鼈甲色の髪の女の子。  中学2年のころ、野球部の手伝いをしていたときだ。 「おい、大城、呼ばれてるぜ」  冷やかすような部員の声に、顔を上げた。 「・・・・?」 「頑張ってください!」  そう言われ、手紙を渡されると、顔を赤く染めて去っていってしまった。 「やるじゃん、あの子、すっげぇかわいくね?」 「名前知らないんだよね・・・・」 「海森祭音って言うんだよ。めっちゃかわいいよなー。学校でも有名だぞ」 「へぇ・・・」  真紅のリボンで2本に縛られたの鼈甲色は夕焼けを受けてきらきらとしていた。 「どうなの?付き合うの?」 「う~ん、彼女いるからな~」  ちゃんと、三条のことを想っていたなら、あんな条件は出さなかったはずだ。  二人の女性を裏切った結果。   それでもあの子の愛を確かめたかったんだ。

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