29 / 50
第29話
**********
「大城先輩!」
フェンスの向こうから声をかけてくる鼈甲色の髪の女の子。
中学2年のころ、野球部の手伝いをしていたときだ。
「おい、大城、呼ばれてるぜ」
冷やかすような部員の声に、顔を上げた。
「・・・・?」
「頑張ってください!」
そう言われ、手紙を渡されると、顔を赤く染めて去っていってしまった。
「やるじゃん、あの子、すっげぇかわいくね?」
「名前知らないんだよね・・・・」
「海森祭音って言うんだよ。めっちゃかわいいよなー。学校でも有名だぞ」
「へぇ・・・」
真紅のリボンで2本に縛られたの鼈甲色は夕焼けを受けてきらきらとしていた。
「どうなの?付き合うの?」
「う~ん、彼女いるからな~」
ちゃんと、三条のことを想っていたなら、あんな条件は出さなかったはずだ。
二人の女性を裏切った結果。
それでもあの子の愛を確かめたかったんだ。
ともだちにシェアしよう!