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第31話
青空は起きるなり、規則的な寝息を立てる咲夜の軽くキスを落とす。
憎き男の友人。何故か絶対的な安心を覚える人。服従している男の実兄。一番愛している男の好きな人。
立とうとする。何かが重い、と思うと、ワイシャツの裾を眠っている咲夜が掴んでいる。
咲夜の体調を考慮し、中に出した分はきちんと掻き出して身体も拭いた。
オレの出番も、終わりか。
青空は目を閉じた。
「・・・・・・・咲夜・・・・様・・・・・」
青空はふと咲夜を見た。
ただ寝ているだけ。そう、寝ているだけ。
死体にでも見えたのか。はぁ、と溜め息をついて青空は煩く纏わり着く長めの前髪を掻き上げる。
咲夜が寝返りを打つ。
復讐の為だけに近付いた。ただそれだけの存在なのに。
「そ・・・・・ら・・・・・君・・・・・?」
青空は、薄く目を開いた咲夜に微笑みかける。
「・・・・・・・おはようございます」
自分は復讐に身を委ねた、咲良の駒。
「ごめ・・・・・ん」
小さく口がもごもごと動く。
青空は驚いた様に目を見開くと、睫毛を伏せた。
弱々しく、愛しく感じられる咲夜。自分よりも年下なのに、時々大人びた表情をする咲夜。それでも、今のように生まれたばかりの赤子よりも弱々しく見せる咲夜。
「咲夜様・・・・」
間違いなく、咲夜をこんな状態にさせたのは自分。それでいて、それは自分でない存在。
「ごめ・・・・・。知らなかった・・・・・咲・・・・良が・・・君に酷いコト・・・・してたなんて」
眦に涙が溢れている。
「いいんです・・・・。もう・・・いいから」
この人は似ている。主に。
「青空君・・・・」
咲夜は重い身体を起こし、青空に抱きついた。
青空は躊躇いがちに、咲夜の背中に腕を回す。
「ごめん。ごめん。俺、何も知らなくて・・・・」
「謝らないで下さい・・・・・」
青空は目を伏せる。
「・・・・・・・・・・・・」
「おやすみなさい」
瞳を閉じる咲夜にそう言った。
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