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第36話

  あの屋上。二人が友達になれた、屋上。 「寛貴」 「あ?」 「おれ、すっげぇ寛貴に感謝してる」 「俺も、そらに会えてよかった」   気付けば小4になっていた。 「きっと、おれ達、もう中2の勉強終わってるぜ」 「それもそらのおかげだよな」   にへへ、と無邪気に笑う寛貴。いやいや、と蒼多が頭を振る。   蒼多は寛貴の頬に手を伸ばす。寛貴も蒼多も、色白い。 「?」 「友達の、温かさ・・・・・」   切なくなって、寛貴は蒼多の背中に手を回す。 「こっちの方が、あったけぇだろ??」 「うん」   蒼多は療養の為に群馬に来たと言っていた。何処か身体が悪いのだろう。痩せているという領域ではないくらい、腰が細い気がした。 「ずっと、友達いなかった。どこでも友達出来なくて・・・・・・・」 「ずっと、今まで、転校し続けて来たのか・・・・・?」 「うん」 「そっか」   冷たい風。身体に障らないだろうか。 「大丈夫か?」 「うん」 「好きだよ、寛貴」 「・・・・・・・ん」   蒼多が寛貴の頬に口付ける。 「ごめん。寛貴。おれ、もうすぐで入院するんだ」 「そっか・・・・・。毎日、行くから、病院」 「ありがとう」   蒼多はふふふと笑う。 「大丈夫なのかよ・・・・・。その・・・・アレだ・・・・」 「怖くなんて、ないよ。退院すれば、また、寛貴に会えるもん。神様が、きっと治してくれるもん」   弱いヤツだと思っていたのに。相手は男の子。自分と同じ年の。それでも愛しく感じてしまう。暫く学校でツルむ事もなくなってしまう。 「ごめっ・・・・!おれ、そろそろ帰るからっ」   寛貴の腕からすり抜けていく蒼多。寛貴の顔を見ようとはしてくれない。 「・・・・・・そら」 「な・・・・・・に・・・・」   寛貴に背を向けて、動きを止める蒼多。声が微かに震えている。 「ちっとんべぇ(ちょっと)、大人になっか」   寛貴は蒼多の元に近付き、腕を取る。身長はさして変わらない。 「何、ひろ―――」   蒼多の唇に口付けた。ほんの一瞬。 「・・・・・続きは好きな子とやれよ」 「・・・・・ひろ・・・・・・き・・・ぃ・・・・」   顔をくしゃくしゃにして泣いている蒼多。いくら大人びていても所詮は9歳、10歳そこらの小さな子供に過ぎない。「入院」に恐怖を感じている。前とは違う。待っていてくれる人がいる。       好きな子=寛貴   泣くな。泣かないで。お願い。泣いちゃやだよ。 「寛貴・・・・・」 「大丈夫だ。」   好きだから。好き。大好きだよ、寛貴。 「そら、大丈夫だから」   力強く抱き締めるだけ。この華奢な身体を。 「寛貴ィ」   どれだけ好きでも、どうにも出来ないのは、そらへの好きさが足りないから? 「ごめんな、何も出来なくて」 「無事に・・・退院でき、るように・・・・約束する・・・」 「絶対だぞ?絶対・・・・・。絶対退院しような?」 「・・・うん・・・・・・」   冷たい風が、慰めているのか、嘲笑しているのか、俺達を包み込む。

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