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第39話
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暇だ。学校に行きたい。いや、もう、行きたくない。敵だらけの教室。自分の所為だけれど。見方は誰一人として、自分を守るものはいない。
「あの人」とは、もう別の学校。一番仲の良かった元彼女は自主退学。
入院。折れた骨。傷む傷。霞んだ視界。腹立たしい程の日本晴れ。
寝るのは飽きた。動くことも出来ない。歌うか?いや、そういう訳にもいかないだろう。
誰かと、話したい。
「あたしの・・・・兄ちゃんね、隼汰のチームの人に巻き込まれてね・・・・・。あたしの兄ちゃんの仲間が・・・・・。隼汰が帰って来たって知って・・・・。それで・・・」
お願い。誰か。オレを守って。
怖い。怖い。
恐れている。何かを。
「あたしの・・・・兄ちゃんね、隼汰のチームの人に巻き込まれてね・・・・・。あたしの兄ちゃんの仲間が・・・・・。隼汰が帰って来たって知って・・・・。それで・・・」
怖いよ、三条。
「私ね 結婚するの」
ごめんね、三条。浮かんでくる三条の言葉。三条を気持ちを無視して、大分傷つけた。
「でも、あたしは、隼汰のコト、本気だったな」
オレは、もしかしたら、三条を、好きだったのかもしれない。近くに居すぎて分からなかっただけなのかもしれない。
三条の好意に、気付かないフリしてたのかもしれない。いや、好意を寄せたのはオレだったのかもしれない。
三条。ごめんね。だけど、三条の好意は、作られたモノ。憎悪によって作られた、無理矢理な好意に過ぎないんだ。つらかっただろう。兄を傷つけた奴等の先輩と一緒にいて。殴りたかっただろう。罵倒したかっただろう。それなのに。
三条に会って、もう一回謝りたい。三条。
「三条・・・・・」
「三条さんじゃなくて、ごめんね」
返事を期待していないただの独り言に返事が来た。この声は・・・・。
「・・・・・・」
乱れたタオルケットを握り締めた。
そして、隼汰は目を見開いた。
「・・・・・・・・」
お互い目を合わそうとしなかった。
入ってきたのは、咲夜。
気不味そうに俯く咲夜。
「・・・・なんで・・・・来たの・・・・?」
はっと、咲夜は顔を上げた。
隼汰の驚いたような表情から、一気に憎悪の表情に変貌する。
「来なくてよかったのに・・・・・。なんで・・・・なんで来たんだよ!?」
自分もお前を嫌っている、といったニュアンスが含まれている隼汰の言葉。
「・・・・・・ごめん・・・・・」
「なんで・・・・。オレのコト嫌いなんだろう?なんで会いに来たんだよ。余計嫌われちまうだろ!?さっさと出てってくれ」
隼汰は枕を掴んだ。
咲夜は目を見開いていた。
「出て行けっ!」
隼汰は枕を咲夜に投げ付けた。
「・・・・ジュンタ・・・・・」
「オレの前に姿現せないでって言ったっじゃんか!今、オレが出てげって?」
「・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・ジュンタ・・・・・・・・」
「・・・・・・・」
「俺・・・・ジュンタに会いたかったのに・・・・・。すっげぇ、会いたかったのに」
「・・・・・・・」
「ごめんね・・・・・。ジュンタ・・・・・ごめん。ジュンタ・・・・」
手を伸ばせば、後戻り出来なくなる。そんな事は百も承知。
「・・・・・ジュンタ・・・・・・・・・」
「・・・・・・もう呼ぶなよ」
この姿を笑いに来ただけだろうに。
「・・・・・・・ごめん」
「オレだって会いたかったし。オレ、アンタのこと好きだったのに!前に放課後ナニしてたかだって知ってるし、体育館倉庫でナニされてたか知ってたのに、アンタが好きだったから多く訊かなかったし、知らないフリしてたさ!」
咲夜は、力が抜けたのか、膝から床に落ちた。
「そんな・・・・」
「なんで何も言わなかったんだ、とか、どうして助けてくれなかったんだ、とか罵れば?そんな気も失せた?」
「俺・・・・・ジュンタに嫌われるって思って・・・。汚いって、気持ち悪いって、気色悪いって、思われるんじゃないかって・・・・・・・」
咲夜の頬を伝う。涙が反射して隼汰にも見えた。
「・・・・・・・オレは・・・・・アンタがそうやってオレに嫌われないようにって、オレに隠して・・・・」
「大嫌い」だなんて言えない。言いたくない。
「ジュンタ・・・・。大嫌いとか、不愉快だとか言っちゃったけど・・・言っちゃったけど、俺・・・・」
「届かないんだもん・・・・・。会いたくても、オレの気持ち、アンタに・・・・」
ごめん、と聞こえて咲夜が隼汰に寄って行く。
「ごめんね」
隼汰を抱き締める。
「ごめん」
「ごめっ・・・・」
隼汰は咲夜の肩に顎を乗せて、涙を零した。
「・・・・・・ごめん、ジュンタ・・・・・」
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