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第43話
*
リビングのソファ。
泣き疲れたのか寝てしまった青空。家に寄らせたら、寝てしまったのだ。
咲夜のプレゼント抱き締めたまま。危ないと思い、その小さな箱を取ろうとするが、青空は子供がぬいぐるみを抱くように強く放さない。
抱き付く人も、抱き付くぬいぐるみも咲夜には与えられなかった、過去。思い出すと悲しくなる。惨めな思いもした。
「さき・・・・ら・・・さ・・・・」
微かな声と滑舌。
「・・・・・あああぁあ!」
「大丈夫?」
ソファに横になって寝ている青空を立って、寝顔を見下ろす咲夜。
「さ・・・・くや・・さ・・く・・ん・・・」
呻きだして起き上がった青空。
「魘された?麦茶飲む?」
「はい・・・・頂きます・・・・・」
咲夜はリビングのすぐ隣のキッチンに行く。
「今日は遅いから泊まっていきな。着替えはあるんだから」
「・・・・・すいません」
コポコポと音を立てて、透明なコップの中に褐色の液体が注がれていく様を青空は見つめていた。
「咲良の夢?」
「咲良」と呟いた青空。何に対してか腹が立つ。
「いえ・・・・・・」
はい、とコップを差し出す。すみません、と返ってくる。
咲夜はしゃがんで青空と背を合わせる。
「前々から思ったけど、どういう関係?」
飲み干されていく麦茶。青空によって。
もやもやする。青空が咲良に縛られるのが。
「・・・・・咲良さ・・・・んは、私の恩人です」
「・・・・・ふぅん」
「・・・・・・・・・・・・・・・ホント、ですよ」
「何も言ってないでしょ」
にやにやと笑う咲夜に、赤面する青空。
「好きなの?」
咲夜は真剣な眼差しで訊いた。
「感謝は、してますよ・・・・・」
青空は咲夜と目を合わせようとしない。
「・・・・・・へぇ」
このまま好きだと言ったらどんな表情をするだろうか。
「咲夜さ・・・くんは、咲良さんのこと、どう思ってるんです・・・・か・・・・」
綺麗なその瞳が好きだ。白い肌も好きだ。青を帯びた黒い髪も好きだ。
「何言ってるの?俺と咲良は、双子だよ?」
青空の手の中に空になったコップを咲夜は邪魔そうに奪い取り、そのまま横に置く。
「あ・・・ぅ・・・・。咲夜くん・・・・・」
「俺って結構内気だけどさ」
悪戯な笑みを浮かべる咲夜。青空はきょろきょろと目を合わせようとすらしない。
「・・・・・私は・・・・」
「青空君」
青空の香水ではない柔らかいグリーンフローラル匂いがする。
「・・・・・・咲夜く・・ん・・・・?」
いつからだろう。咲良のモノだと思った時からだろうか。
「君は、咲良のモノかも知れないけど、俺。俺・・・・・」
「・・・・・・・咲夜くん、私は、つい先ほど、咲良サマに、捨てられました・・・・」
心臓を軽く握られた感覚。」
「男とか女とか、そんなの関係無い。青空君が・・・好き・・・・」
多分、これは「好き」っていう感覚なのだろう。
「咲夜くん・・・・」
咲良サマが私を捨てたのは、私を想ってくださったからですか。
それとも私に飽きたからですか。
――この男が好きか?
大城に近付くために決まってるでしょう。
――俺に嘘は通用しないからな。
なんで・・・・?
――お前の・・・・お前のもう一つの人格だから。
・・・・・君だったんだね。
――お前を守る為に、俺はお前の選んだ道に口出すつもりはない。
・・・・・・迷惑だったよ。君の所為で、壊されたんだ。
――全くだな。
もう私から、離れてよ
――俺はお前で、お前は俺だ。
どうして君は暴れるの
――いつでもお前は誰かに抱かれ、酷い扱いを受けた。どうして我慢できる?
君がいるから私は、精神科に通ったよ。
――分かってるのか?
「青空・・・・」
「咲夜くん」
彼が、私にキスをする。
「俺がつらいから、そんな表情 しないで・・・・・」
「うん」
本心を晒してはいけない。だけど。
――お前は負けたんだ。自分の最愛の妹のを捨てる選択をしたんだ。それでも俺はお前が後悔しなければ、それでいい。お前さえいれば、俺はそれでいいんだ。
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