118 / 222
第94話
「はい、…先生?」
『茜くん』
何か用事だろうか。 テスト勉強してるハズだけど。
俺はオナニーしていた事を隠すために、なるべくいつも通り振る舞うよう心がけた。
バレたら面倒だし…
『何か用があるわけじゃないんだけど… ずっと会ってなかったから茜くんの声聞きたくなっちゃって』
「そっか… 俺も、その…会いたい…」
素直に先生からの電話は嬉しくて、つい「会いたい」と言ってしまった。困らせるから言わないつもりだったのに…
勉強する為にバイト休んでいるのに、俺に会会ったら結局勉強出来なくなる。だから、テストが終わるまで電話も会うのも止めておこうと思っていたのに。
先生がこうして電話をくれるから、つい口走ってしまったのだ。
「ちがっ、その、今のナシ!」
『もう聞いちゃったから無理。ごめんね、寂しい思いさせて』
「いいんだ、テストと俺だったら、テストの方が大事だから」
己テストめ…と何度恨んだことか。
それでも仕方がない。だってお互い学生で、テストで全てが決まるのだ。俺のせいで先生の夢を壊したくない。少しでも夢に近づけるのならば、俺は先生の邪魔にならないようにする。
電話越しに、先生の声色が変わった気がした。
「茜くん、オナニーしてる?」
「ふぇ?!し、してないけど?!何言い出すんだよ!」
なんでバレた?!ほんとに監視カメラ付いてないよね?!盗聴器とかもないよね?!
先生の勘だとしたら、すごいと思う。俺のことなんでもお見通しだ。
ともだちにシェアしよう!