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第98話
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「鈴川 茜です!よろしくお願いします!」
「こちらこそよろしく。人手が足りなかったから助かったよ」
母の昔の同僚だったらしいこの男性は、内海(うつみ)と言うらしい。柔らかな雰囲気で優しそうな感じの人だ。確か歳が30代前半と聞いていたが、顔立ちが幼い為か全く30代に見えない。
20代でも通りそうだな。
黒猫をモチーフとした店内で、壁には黒猫の絵が書かれていた。 すごく可愛らしいお店だ。こんな素敵なお店なのに、人手不足だなんて…どうしてなんだろう。
時給もいいし、賄い付きだし…
「じゃあ、これに着替えてね」
「はい」
渡された制服は、白のシャツに藍色のボーダーが入ったオシャレなシャツと、スカーフ、黒のズボンに黒のエプロン、エプロンには黒猫の柄がプリントされている。
黒色の高そうな靴も貸してくれた。
なんか、思っていた以上にオシャレな制服…
すべて身につけると、仕事の出来る店員さんになったみたいでカッコイイ。
「うわぁ!すごい似合うね!」
「あ、ありがとうございます…」
着替えて出ていくと、待っていた店長が興奮気味に目を輝かせている。
そこまで興奮しなくても…
「あ、あとコレ付けてね」
「…え?」
ポンと手渡されたのは、猫耳カチューシャ。
意味がわからなくて、暫く空いた口が塞がらなかった。
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