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第114話

「ゆ、悠花…」 「あー、ふーん。 そういう事ね。悠誠の友達だったんだ」 お姉さん…恐らく先生のお姉さんだろう。前に鬼のような姉が居ると言っていた。 確かに先生を見る顔がとても怖い。 この人が先生のお姉さんか… 姉弟揃って顔がいい。本当にそっくりでびっくりした。 先生のお姉さんは怖い顔から、ニコニコ笑顔に戻って席を立つ。 「弟と仲良くしてくれてありがとう。 虐められたら私に言うのよ? 懲らしめてあげるから」 グッと拳を作って見せるお姉さんは、とても強そうだった。 先生も「勘弁してくれ」と言わんばかりに顔を歪めている。 先生のそんな顔は初めて見た。 お姉さんには敵わないのだろう。 「一番会いたくない人に会ってしまった…」 「言い方…」 お姉さんと別れてから一気に疲れたのか、はあぁ…と大きなため息をついた。 よっぽど会いたくなかったんだな。 俺も義兄にはあまり会いたくないけど、それは執拗いからであって。 先生の会いたくないとはまた違う。 「なんか、ごめんね」 そもそも一緒にたこ焼きを買いに行っていれば、会うことは無かったかもしれない。 俺があそこに座っていたから声をかけられただけであって、本当に偶然だったのだ。

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