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第126話
「あ、あの旅館じゃない?」
「本当だ!すごい綺麗な旅館だね!」
風情のある建物が見えてきた。
まさしく『和』といったレトロな旅館だった。
あれだ、ジブ〇とかに出てきそう。神様が居そうな雰囲気。
チェックインして、部屋に案内される。
俺たちが泊まる部屋は、椛の間と書かれていた。
中は和風ですごく落ち着いた感じのお部屋。
結構広くて、外にはなんと露天風呂も付いていた。
え、ここ露天風呂付客室だったの?!
絶対高いよねこの部屋!!
先生も考えていることが同じらしく、顔を青くしていた。
「俺ら何されるんだよ… あの鬼がここまでするなんて、俺怖すぎて帰れない」
「ま、まぁまぁ。俺と一緒に行けって言われたんだから、俺も巻き込まれてるよ、1人じゃないから大丈夫だよ!」
そう元気づけてみるものの、俺も怖い。
先生のお姉さんは何を企んでいるのか…
この時は知らなかった。
「5時か… 結局移動に時間かかっちゃったね」
「結構遠いんだね。地図見た時は近く感じたのに」
5時だとあまりウロウロするのも危ないかなぁ。
賑やかな街中だと出歩いたりも出来るが、ここら辺は海と自然に囲まれた静かな旅行だ。
あまり出歩かない方がいいかもしれない。
「じゃあさ、お風呂入ろうよ!露天風呂もあるし、ここの温泉源泉かけ流しなんだって!」
「へぇ、じゃあ温泉行こうか」
着替えを持って、大浴場に向かう。
ちょうど夏休みシーズンだから人が多い。
「あ、」
と言って、先生が止まった。
どうしたんだろう。
振り返ると、手を引かれ部屋に戻った。
え、なんで?温泉入るんじゃなかったの?
不思議に思っていると、先生はアハハ…と苦笑いを浮かべている。
「温泉入りたいんだけどさ… 茜くんに付けたキスマーク見えたらマズいと思って… ほら、家族連れ多くて子どもも居るし」
「キスマーク?」
おかしいな、昨日鏡を見た時はなかったけど…
「背中だよ、背中」
背中?!そんな所見えるわけないだろ!
じゃあ俺…今までも気づかなかっただけで背中にキスマーク付けてたのかな?
体育の授業とか気をつけるようにしよう…
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