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第152話
半分ほど食べたところでもうギブアップした。これ以上食べたらたぶん、絶対リバースする。
まぁ食べないよりはマシか、と呟いて机に置いてあった薬を手渡される。
粉タイプの薬は飲めないから家に置いてあるのはほぼ粒状の薬だ。
この薬はよく効くがとても苦い。俺は覚えている、中学生の頃に風邪を引いて、「薬を飲まないと買ったばかりのゲームを捨てる」と母さんに脅されて泣きながら飲んだのを。
今思えばクレイジーな母親だ。
「飲める?」
「…やだ…苦いもん…」
「子どもか」
先生の問にフルフルと首を振った。
苦いのは嫌い。甘いのは好きだけど、甘い薬も嫌い。結論、薬は嫌いだ。
手に持っていた薬を奪われ、無理やり口に入れようとする先生。荒っぽい方法に少しびっくりする。たまにそういう所あるよね、先生って。
絶対に飲まない!と口をギュッと締めて、顔を逸らす。
「飲んで」
「ん゛ー!!」
絶対にやだ!
先生の腕から解放されたくてジタバタと暴れると、はぁ…とため息をつかれた。諦めたか。
別に薬飲まなくても治るし、飲まなくていいもん。
寝ようと布団を被ろうとした途端、グイッと体を引き寄せられた。
同時に唇と唇がぶつかった。勢い余って歯と歯がぶつかって痛かった。
ん?痛い?夢なのに?
べロリと唇を舐められ、口を開けろと催促する。
風邪がうつるからキスはダメだろ。俺だってしたいけど…
「早く口開けてよ。キスしたいんだけど」
「ん、むっ…、や、ぁ…風邪、うつるっ…んっ!」
頑なに口を開けようとしない様子を見て、耳元で色っぽい声で囁かれる。敏感になっているのか耳元で喋られるとゾクゾクする。
息が耳にかかってくすぐったくて、つい口を開いてしまって、今だと言わんばかりに口内に先生の舌が侵入してきた。
風邪、うつるのに…。抗えない。
俺は久々のキスの快感に身を委ねてしまったのだった。
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