189 / 222

第152話

半分ほど食べたところでもうギブアップした。これ以上食べたらたぶん、絶対リバースする。 まぁ食べないよりはマシか、と呟いて机に置いてあった薬を手渡される。 粉タイプの薬は飲めないから家に置いてあるのはほぼ粒状の薬だ。 この薬はよく効くがとても苦い。俺は覚えている、中学生の頃に風邪を引いて、「薬を飲まないと買ったばかりのゲームを捨てる」と母さんに脅されて泣きながら飲んだのを。 今思えばクレイジーな母親だ。 「飲める?」 「…やだ…苦いもん…」 「子どもか」 先生の問にフルフルと首を振った。 苦いのは嫌い。甘いのは好きだけど、甘い薬も嫌い。結論、薬は嫌いだ。 手に持っていた薬を奪われ、無理やり口に入れようとする先生。荒っぽい方法に少しびっくりする。たまにそういう所あるよね、先生って。 絶対に飲まない!と口をギュッと締めて、顔を逸らす。 「飲んで」 「ん゛ー!!」 絶対にやだ! 先生の腕から解放されたくてジタバタと暴れると、はぁ…とため息をつかれた。諦めたか。 別に薬飲まなくても治るし、飲まなくていいもん。 寝ようと布団を被ろうとした途端、グイッと体を引き寄せられた。 同時に唇と唇がぶつかった。勢い余って歯と歯がぶつかって痛かった。 ん?痛い?夢なのに? べロリと唇を舐められ、口を開けろと催促する。 風邪がうつるからキスはダメだろ。俺だってしたいけど… 「早く口開けてよ。キスしたいんだけど」 「ん、むっ…、や、ぁ…風邪、うつるっ…んっ!」 頑なに口を開けようとしない様子を見て、耳元で色っぽい声で囁かれる。敏感になっているのか耳元で喋られるとゾクゾクする。 息が耳にかかってくすぐったくて、つい口を開いてしまって、今だと言わんばかりに口内に先生の舌が侵入してきた。 風邪、うつるのに…。抗えない。 俺は久々のキスの快感に身を委ねてしまったのだった。

ともだちにシェアしよう!