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第157話

*** 先生と仲直りして数日が経った。ついに体育祭の練習が始まり、放課後も練習する時間に当てられたりと中々に忙しい日々を送っていた。 ひとつ言っておく。俺は運動が苦手だ。苦手というより、才能がない。 そんな俺が出る種目は、綱引き、借り物競争、障害物リレーだ。その中でも借り物競争と障害物リレーは特に人気でだったが、競技に出る生徒は出たがらなかった。 何故なら、借り物競争は無理難題のお題が入れられているので有名だ。去年は『10万円(札束)』『校長先生のカツラ』『イケメン』『朝ドラ女優』『UFO』などなど、無理なお題が多いのだ。こればかりは運だから仕方ないけれど、明らかに無理なのはやめて頂きたい。 噂ではそれっぽい物を持っていけばいいらしいく、失格にはならないらしいけど。 「疲れた~、もう無理、動けない」 「お疲れ様。頑張って偉いね」 「頑張るも何も強制じゃんか…。もうやだ」 今日も放課後は体育祭の練習で、帰ってきて先生に勉強を見てもらっている。 今は体育祭を控えているから授業もあまり進んでなくて、家庭教師に来てもらってもそこまで詰めてやる事はなく、ゆっくり教えて貰っている。 ぐったりしている俺の頭を撫でて褒めてくれる。 こうして先生に褒めてもらえるから、頑張ろうと思うのだ。 絶対に変な姿は見せられないから、練習も頑張っている。 だが、やはり運動が苦手な俺はみんなの足を引っ張っていないか心配だ。みんなが出来ることが出来なくて嫌になってくる。 「そうだ、体育祭頑張ったらケーキ買ってあげる」 「えぇ?ケーキなんていつでも買える…」 「最近駅前にオープンした先着5名様限定の苺ショートケーキだとしても?」 「…っ?!」 そ、それは…!!幻の苺ショートケーキではないか! 毎日朝の4時から並ばないと買えないという幻のケーキ。とっても人気でテレビでも取り上げられていた。限定ケーキ以外のケーキもかなり美味しいらしく、長蛇の列を作っていると言うお店。 「食べたいよね?」 「た…食べたい…」 「頑張る?」 「…仕方ないから…頑張る…」 いい子、と頭をわしゃわしゃと撫でられる。俺は犬じゃないぞ! だけど、やる気は出てきた。ケーキの為に頑張ろう。

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