195 / 222

第158話

* あぁ、この授業が終わったら体育か… 憂鬱だ… 移動教室で教科書を手に持ち、筋肉痛であまり上がらない足を引きづって廊下をフラフラと歩いていた。 考えるだけで気分が沈む。 お手洗いに行った真紘の分の教科書も持っているから重いし。腕はあまり使わないのに何故か腕も筋肉痛だ。何でだろう、運動不足過ぎなのかな? はぁ、とため息を付きながら歩いていると、ドンッと体に衝撃が走って誰かとぶつかってしまった事に気づく。 「わっ、ごめんなさい!」 「いってぇ…、お前はえーと、A組の鈴川だっけ?」 「え…そう、だけど…」 廊下ですれ違った男子生徒は恐らく同じ学年の人だ。クラスは違うが何回か見たことがある。 その男は、茜を見下してハッと鼻で笑った。 「お前の練習風景見たけど、あれはないわw 絶対クラスのみんな迷惑してるだろ」 「え、っと…」 「お前見てるとイライラすんだよ。ヘラヘラしてさ、どうせ顔しか良いところねーのに」 「……」 えーと、俺たち初対面ですよね?なんかすっごいディスられてない?この人は初対面でもグイグイ行く人なのかな?コミュ力の塊みたいな感じ?わー、すごーい、見習わないとー。 まぁこの人の言い方からして悪意しか感じないけど。たまに居るよね、こういう人。 とりあえず言いたいこと言わせておけばいいや。 「は?何も言い返さない訳?マジうざい」 「……」 色々言いたいことはあるが今は我慢しよう。俺が我慢すれば誰にも迷惑かけないし、穏便に済むかもしれない。 ただ平和に過ごしたいだけなのに、なぜこんな事になってしまったのか。 男子生徒の顔が見る見る間に歪んで、怒りの表情を作った。俺が反抗しないのが気に食わないのだろう。 反抗なんてする訳ないだろ。絶対俺負けるし。 「お前いい加減にっ…」 「わっ…」 「おい!何やってんだよ!」 ガシッと胸ぐらを掴まれ今にも殴られそうになっていたその時、救世主のご登場だ。 真紘は俺と男子生徒を離し、間に入って俺を守ってくれた。 「チッ… 竜崎かよっ…!」 男子生徒は真紘を見るなり早足で去って行った。 何だったんだ。というか、何がしたかったんだろう。

ともだちにシェアしよう!