197 / 222

第160話

翌日、学校に行くと上履きが無くなっていた。 おかしいな。昨日確かにちゃんと下駄箱に入れたのに無くなっている。 誰かが間違えて履いたのかもしれない。 それなら仕方ない、と来客者用のスリッパを貸してもらい教室に向かった。 「茜、おはよう」 「おはよう、真紘」 珍しく早く登校していた真紘が俺に気づいて声をかけてくれる。いつも俺から挨拶したら無視するくせに…。 真紘なりに心配してくれているのだろうか。 「大丈夫?何か変わったことは?」 「うん、特には。 あ、でも何でか上履きが無くなっててさ、どこ行ったんだろう」 「はぁ?!」 上履きの話をしたら、普段あまり表情を変えない真紘がとても驚いたように声を上げた。 「お前、それって…」 「いや、でも誰かが履き間違えたとかあるかもだし。まだ決まってないから」 「いやいや… それはお人好しすぎるだろ…」 ありえねぇ、と呟いていつもの真紘の表情に戻った。 そうだ、まだ城田くんが犯人だと決まったことじゃない。 証拠もないのに罪をなすりつけるのは良くない。 「あ、次移動だよ!早く行かないと時間が…」 「…はいはい、すぐ行く」 次の移動教室の為に教科書を持って廊下を歩いていると、ふと中庭の池に目が行った。池では金魚が飼われていて普段あまり気にしないのだが、今日は何故か目に付いた。 遠目で分かりづらいが、白い物がプカプカと浮いていて違和感を覚えた。 あれって…もしかして… 「ごめん、お腹痛いからトイレ行ってくる!先生に言っといて!」 「は?!」 早口で真紘に伝えると、直ぐに靴を履き替えて中庭に向かった。 あぁ、やっぱりか…と白い物体、俺の無くなった上履きを拾い上げ、ポタポタと雫が落ちるのをただ見ていた。 「このくらい、…平気だし…」 ポタ、と地面に水滴が落ちて染みを作った。

ともだちにシェアしよう!