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第161話
結局授業に出る気にはなれなくて、1限目からサボってしまった。
先生に見つからないように適当な場所で暇を潰し、チャイムと同時に教室に戻る。
教室に戻ると、円を作って何ならザワザワとしている。
何かあったのかな?と疑問に思っていると、後ろからガシッと肩を掴まれびっくりした。
「茜! 探しただろ!」
「真紘か!びっくりしたよ」
後ろには息を切らしている真紘が立っていた。その様子からすると、相当俺のことを探してくれていたのだろう。
探すということは、なにか俺に用事があたんだよね?
「あ…鈴川くん、これ…」
「…なにこれ…?」
俺の存在に気づいたクラスメイトが一枚の布を手渡してきた。いや、布ではない。これは俺の体操服だ。胸元に『鈴川』と刺繍がされているから間違いない。
頭が真っ白になって、言葉が出なかった。
なんで…?うそ、どうして…
「茜… 大丈夫か…?」
無言で切り刻まれた体操服を握っていると、その手をギュッと力強く掴んでくれる真紘がいた。
どうしよう… 助けて…
なんて真紘に頼んでも問題は解決しない。もうどうすればいいのか分からない。
「…ごめん…、俺、早退するね」
「…茜…。 分かった、俺から先生に言っとく」
とてもじゃないけど、今の状態で授業を受けるのは無理だと判断し、早退した。
真紘も俺の気持ちを分かってくれているみたいで、止めなかった。
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