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第175話

「真紘くんごめん、助かったよ」 「……別に。雪斗さんが若い女の子に囲まれてデレデレしてたから邪魔してやろうと思って」 「デレデレなんてしてないよ。真紘くん、怒ってるの?」 「怒ってないけど」 怒ってはないが、イライラはする。雪斗は自分のモノだと言いたいのに言えないもどかしさ、真紘も女性なら堂々とできるのに……なんて思ってしまう。 「じゃあ、俺行くね」 「……はい」 そんな真紘の悩みに気付いていない雪斗は、にこにこと笑顔を振り撒いて秋月先生と一緒に去って行った。 俺の前以外で笑うなよ、ファンが増えるだろ。と内心無茶なことを思ったが仕方がない。 席に戻ろうと思い、ふと茜の方を見ると険しい顔をして座っているのが見えた。秋月先生も女子に人気だったもんな、茜も悩んでるんだ。 「茜、顔怖いぞ」 「そういう真紘だって。なんか怒ってるみたい」 「怒ってないけどイライラする」 「イライラはしないけど、モヤモヤする」 窓際の席、太陽の光を背中に感じながら出たのは大きなため息だった。 とりあえず次の授業の準備をしようと教科書を取り出していると、後ろの席で「わぁ!」と小さな悲鳴が聞こえた。 「どうした!?」 「机の中も画鋲入ってる……。教科書も破られて落書きされてるし……」 「マジか……、これ、ほんとにヤベぇだろ」 茜は涙目で「どうしよう」と呟いた。 とりあえず机の中の画鋲も袋に入れ、教科書は真紘の物と交換してやった。どの道この破られた教科書は使い物にならないから捨てるしかなさそうだ。ペラペラとページを捲るが『死ね』だの『消えろ』だのふざけた事が書かれていて見ていられず机の中にしまった。

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