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第176話

次の授業の準備をしようと机の中に手を突っ込んだら、指先に何かが刺さった鋭い痛みが走った。中を除くと、机の中にも画鋲が入っていて、教科書も破られて落書きもされているという無残な様だった。 涙目になっていると、真紘が全て片付けてくれて、教科書も自分の物と交換してくれるという。 断ったのだが強引に押し付けられた。真紘のこういう所はかっこいいと思う。普段はゲームオタクで無気力だが、友達思いで面倒見がいい所とかは尊敬する。 「真紘、ありがとう」 「気にすんな。授業中は基本寝てるし、教科書なくても平気だから」 確かに真紘はいつも寝ている気がする。だけど頭が良いのはどうしてだろう。 有難く使わせて貰って、一限目の授業を乗り切った。真紘は宣言通りずーっと寝ていて、それはいつもの光景なので先生も特に気にする様子はなかった。 一限目の終わるチャイムが鳴って、先生が出て行くのを見送ってから席を立つ。 実はさっき画鋲で指を刺してしまって、念の為絆創膏を貰いに保健室に向かうのだ。一人で行動するなと言われていたが、教室から保健室くらいの距離なら大丈夫だろと思い、誰にも言わずに来てしまっていた。 早くしないと次の授業が始まってしまう。少し早足で歩いていると、ちょうど曲がり角から足がニュっと出てきて見事に転んでしまった。 これはたまたまではなく、わざとだ。もし茜じゃなかったらどうするつもりだったのか。 「悪い、足が滑った」 「城田くん……。や、いいよ。俺もちゃんと前見てなかったから」 茜を見下げてニヤニヤと笑うヤツは、嫌がらせの主犯格、城田だった。 「何が足が滑っただよ。絶対わざとだろ」と言いたかったが、そんな事を言ったら喧嘩になるし100%茜が負けるのは目に見えている。

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