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第179話
だいぶ生徒の前で授業するのにも慣れてきた秋月は、国語教師の三村に見守られながら淡々と授業を進めていく。三村はプリントで授業をする事が多いので、秋月のそのプリント通りに進めて行く。
今日は進める範囲の予習もバッチリだし、要点や、質問も予め予想して回答も用意してある。
三村には「真面目だなぁ!」なんて言われたが、教育実習生である秋月は勉強する為にここに居るのだから当然の事である。
「何か質問ありますか?」
秋月がそう問えば、メガネをかけた真面目そうな男子生徒が手を挙げて質問する。名前は茜と真紘以外あまり分からないが、授業で指名して当てる事はあまりないので今の所は大丈夫だろう。まだ顔を覚えきれて無いので、顔と名前が一致しないのだ。
男子生徒からの質問内容は、予め予想してあったのでスムーズに答えることができた。
やっぱりここは分かりにくいよな。俺も分からなかったから。
「じゃあ次は問二の問題を解いてみましょう。順番に回るから、分からないことがあればその時に聞いてください」
それぞれ席の近い子と相談したり、一人で黙々と進める子もいる。
順番に回っていき、解けているか、内容を理解しているかを見て回る。
さすが進学校なだけあって、回答が正解に近い。国語に間違いはないから、多少正解からズレる事だってある。人それぞれ考え方は違うのだし、秋月はそれが面白いと思っているのだ。
優秀な生徒達の中に一人、問題児が。
秋月はその生徒の元へ足を進め、背中を軽く叩いてやる。
「こら、起きなさい。今は授業中だよ。お昼寝の時間じゃありません」
「ん゛~……、やめてよ雪斗さん……」
「誰が雪斗だ」
窓際の席で暖かい太陽の光を浴びながら優雅にお昼寝をする男子生徒、真紘を起こした。
低く唸った後、幸せそうな顔で親友の雪斗の名前を呼ぶ。
何コイツら一緒に寝てんの?羨ましい……!俺も茜くんと一緒に寝たい!などと思うが、そんな幸せな妄想を突破らって、真紘に思い切りデコピンしてやった。
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