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第181話
ソワソワとした面持ちで、校門前に立つ人物が二人。
一人は百面相を繰り広げ、もう一人はダルそうにスマホを触っている。
「はぁ、どうしよう。先生と一緒に帰るとか……。まさか、これってデートなのか!?」
「ただ一緒に帰るだけだろ?ちなみに俺はこの後お家デート」
「さっさと帰れコノヤロー!」
否定された挙句、この後デートだと惚気られ隣に立つ男をゲシゲシと足で蹴る。
ムカつく!俺も先生とデートしたいのに!
真紘も雪斗を待っているらしいが、今はゲームのイベントで忙しいらしく、ちょっとイライラした様子だった。
「お待たせ」
後から声を掛けられ、振り返るとそこにはずっと会いたかった人が。
いつもの私服もカッコイイが、スーツを着た先生もカッコイイ……と思わず見蕩れてしまった。秋月は茜の視線に気付き、ふわっと優しく微笑んだ。
一方、真紘と雪斗は何だかギクシャクしていて、いつもとは違う感じだ。珍しく真紘の機嫌が悪く、雪斗も察したらしく無言で彼の隣に立っている。
「じゃあね、真紘!また明日!」
「あぁ」
そんな二人の変化に気付かない茜は、真紘と雪斗に手を振って、秋月と共に歩き出した。
秋月の授業中、彼にシャープペンシルを手渡すと、分かりやすいように教科書に丸をつける他に、ノートの端に綺麗な文字で『一緒に帰ろ』と書かれていたのだ。
まるで少女漫画にでも出てきそうな誘い方に、顔を真っ赤にして小さく頷いたのだった。
「どこか寄って行こうか?」
「あ、じゃあス〇バ!新しくパンプキンフラペチーノが出たんだ!」
「じゃあそこにしようか」
10月になれば、カボチャの季節がやってくる。野菜の中でも特にカボチャが好きな茜は毎年この季節になると、パンプキンフラペチーノを飲みに通っていたのだ。
今日は比較的に暖かい方だし、冷たい物を飲んでも大丈夫な気がした。
「先生何飲む?買ってくるよ」
「じゃあアイスコーヒーお願い。席取っておくね」
買ってくると言うと、財布から千円札を出して茜に握らせて席を取りに行ってしまった。
このくらい奢るのに。俺だってバイトしてるし。だけど先生としては奢られるより、奢りたいのだろうか。
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