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第183話
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いよいよ体育祭が明日に迫る今日、この日の授業は半日で、午前は授業、午後からは体育祭の準備や練習となっている。
教育実習生は全員で10名いて、秋月はA組、雪斗はD組の担当になっている。
茜と同じ組になれた秋月は心の中でガッツポーズをキメていた。
一方雪斗は、真紘と帰ったあの日から元気がなく、尚且つやんちゃ者が多いと評判のD組担当になってしまい、気持ちは海の底くらい沈んでいた。
「ユッキー、大丈夫?調子悪そうだね」
「悠誠は元気そうで何よりだよ……。はぁ、よりにもよってD組か……。城田くん、怖いんだよなぁ」
「城田って……茜くんをいじめてるヤツじゃん!」
「えぇ!?いじめられてるの!?」
大きな声でそう言う雪斗の口を慌てて塞ぐ。あまり大きな声で話す内容ではない。それに茜はあまり目立ちたくないからと、学校に相談はしていないらしい。
この会話を誰かに聞かれたら、きっと茜は嫌がるだろう。コトが大きくなる前に穏便に解決したいものだ。
「だ、ダメじゃんそれ!早く止めさせないと!」
「証拠がないんだよ。城田だって決定づける証拠が。直接城田がやってる写真でも撮れたら脅してやるんだけど」
「そ、そうか……」
城田の話をしたら、一気に縮み上がった雪斗を励ますように背中をポンポンと叩く。
「大丈夫だって。ユッキーも何かされたら真紘くんが助けてくれるだろ」
「……分かんないよ、そんなの…。もう、別れるかもだし……」
「え……!?」
「じゃ、そろそろ行くから!悠誠も頑張って!」
あのラブラブカップルが別れる?何があったのかは分からないけれど、雪斗のあの泣きそうな顔は本当に別れるかもしれないのだろう。
詳しく聞こうとしたが、あまり触れて欲しくないのか雪斗は早足で去って行ってしまった。
ポツンと人気のない廊下に立っていると、いきなり後からドーン!とタックルされた。
何事かと思い後ろを振り返ると、そこには見た事のある子が立っていた。
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