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第35話
店を出て、どこに行くのかと尋ねると
「俺の家」
と答えた。
先生の、家……。
ゴクリと生唾を飲み込む。それは、是非行きたい。 でも緊張するな。
「先生は一人暮らし、なの?」
「そうだよ。でないと呼ばないし」
そ、そうだよな。 先生のお母さんに紹介されるような間柄でもないし……。
お互い無言で歩く。 何故だろう、いつもより緊張する。
半分以上残っているフラペチーノが冷たくて、セーターの袖を伸ばして両手で持つ。
「それ、俺も飲んでみたい」
「これ?いいよ」
はい、とフラペチーノを渡した。
先生はストローに口を付けるとチューっとフラペチーノを吸っている。
俺の乳首も、同じようにして吸って…… とんでもない事を考えていた。
危ない危ない、と首を振る。
「美味しい。 これ飲んでみたかったけど寒いから止めたんだよね」
「そうだったんだ。 俺、苺好きだから寒くてもつい飲んじゃうんだよね」
「ほんとに、ちょっと飲んだだけだけど寒いね。茜くん寒くない? もう少しで家に着くんだけど」
そう言って細い路地裏を通って、表に抜けるとそこは高級住宅街が立ち並ぶ、所謂お金持ちが住んでいる場所だった。
目を丸くしてキョロキョロと周りを見渡していると、手を引かれて歩き始める。
すごい、どこも大きく立派な家ばかりだ。
「まさか、ここなの?」
「違うよ。ここ通った方が近道だから」
なんだ、良かった。少しホッとした。
そして連れてこられたのが高級住宅街を抜けて、少し歩いた所にある普通のマンションだった。
安心して胸を撫で下ろした。
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