35 / 222

第35話

店を出て、どこに行くのかと尋ねると 「俺の家」 と答えた。 先生の、家……。 ゴクリと生唾を飲み込む。それは、是非行きたい。 でも緊張するな。 「先生は一人暮らし、なの?」 「そうだよ。でないと呼ばないし」 そ、そうだよな。 先生のお母さんに紹介されるような間柄でもないし……。 お互い無言で歩く。 何故だろう、いつもより緊張する。 半分以上残っているフラペチーノが冷たくて、セーターの袖を伸ばして両手で持つ。 「それ、俺も飲んでみたい」 「これ?いいよ」 はい、とフラペチーノを渡した。 先生はストローに口を付けるとチューっとフラペチーノを吸っている。 俺の乳首も、同じようにして吸って…… とんでもない事を考えていた。 危ない危ない、と首を振る。 「美味しい。 これ飲んでみたかったけど寒いから止めたんだよね」 「そうだったんだ。 俺、苺好きだから寒くてもつい飲んじゃうんだよね」 「ほんとに、ちょっと飲んだだけだけど寒いね。茜くん寒くない? もう少しで家に着くんだけど」 そう言って細い路地裏を通って、表に抜けるとそこは高級住宅街が立ち並ぶ、所謂お金持ちが住んでいる場所だった。 目を丸くしてキョロキョロと周りを見渡していると、手を引かれて歩き始める。 すごい、どこも大きく立派な家ばかりだ。 「まさか、ここなの?」 「違うよ。ここ通った方が近道だから」 なんだ、良かった。少しホッとした。 そして連れてこられたのが高級住宅街を抜けて、少し歩いた所にある普通のマンションだった。 安心して胸を撫で下ろした。

ともだちにシェアしよう!