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第36話

「意外と散らかってる」 「ごめんごめん、片付け出来てなくて」 先生の部屋は生活感の感じられる部屋だった。 服がソファに脱ぎ捨てられていたり、大学で配られたプリントなのかそこら中に散らばっていた。 洗濯物も床に置かれたまま畳まれずに放置されていた。 忙しいもんな、大学行って、家庭教師のバイトもして…… そうだ。 「片付け手伝おうか?」 「いや、いいよ。気を遣わなくて」 「でも…… いつもの恩返しがしたいんだ。だから手伝わせて?」 わざと上目遣いでお願いすると、「はぁ…… わかった」と先生が折れた。 割と片付けは得意だ。小さい頃から家を開けがちだった母の代わりにいつも俺が掃除していた。母の再婚相手の 父は海外を飛び回っているので帰ってこないし、血の繋がらない兄が居るが、兄も一人暮らしをしているので帰ってこない。 1人は慣れたものだ。 「じゃあ、洗濯物畳むね」 「ありがとう。じゃあ俺は洗濯機回して、プリント類片付けるよ」 先生はそこら中に散らばっているプリントを掻き集めて、ゴミ箱の中に捨てた。 ソファに丸められて置いている服も掻き集めて、洗濯機を回しに行った。 さて、洗濯物畳むか。 上着類、下着類、ズボン類、タオル類、と分けて畳む。一人暮らしだけどだいぶ洗濯物を畳んでいなかったのか、結構な量があった。 へぇ、先生ってこんな下着履くんだ、とかこの服かっこいいな、とか下心丸出しで畳みたいと言ったのではない。決して、違うぞ。

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