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第57話
「俺が貰おうかな? お嫁に」
「え……?!」
ばっと顔を上げると、先生と目が合った。 その目は本気のように見えたけれど、すぐにニコッと笑って微笑む。
「なんてね。 冗談だよ」
冗談か、と少し残念な気持ちになった。 お嫁に貰ってくれたらいいのに……と。
男同士では結婚できないけど、幸せにはなれる。 結婚という形に囚われなくても別にいいと思っている。
俺は、だけど。
先生はきっと素敵なお嫁さんを貰うのだろう。その時には一番におめでとうって言ってあげるんだ。
「何考えてるの? 泣きそうになってる」
「いや、別に泣かないけど…、先生が将来結婚しちゃうんだって考えたらなんか泣けてきて……」
「俺、結婚しないけど? あ、でももしかしたら出来るようになるかもね」
今は結婚願望はないってことだろうか。
先生は俺をチラチラと見る。 その視線に頭に?マークが浮かぶ。
分からない俺に先生はびっくりした顔をしている。
「茜くんは本当に鈍感だねぇ」
「え?」
その言葉に更に?が浮かぶ。
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