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《first contact1》

◇ 「ボス、差し出がましいようですが、簡単に帰してしまって宜しかったのですか?」  須藤の秘書兼、ボディーガードを務める真山は主を思ってなのか、堪らずと口にした様子。  須藤はそんな部下を一瞥し、少し笑う。  笑うといっても、表情には出ないのがこの男が冷酷そうに見える所以とも言える。 「成海は無事にアパートに入ったのか?」  須藤が懐から煙草を一本抜くと、すかさず真山が火を差し出す。大体はそれを断り自身で付けることが多いが、今日のところはと須藤はその火に煙草の葉を近づけた。 「はい。かなり戸惑った様子でしたが、無事に部屋へ入るまでを見届けました」 「そうか」  ブラックマーケットの主要人物である名簿を巡っての取引。スムーズに仕事を運びたい須藤は邪魔者を一掃したかった。そのため須藤はわざと近辺にガセネタを蒔いたのだ。  面白い程にネズミ達が引っ掛かる中、偶然にもネズミの大元である人物、円城寺に関係のある人物が今回に関わってきた。  それがダミーであるUSBを預かった人間から依頼を受けた、何でも屋【J.O.A.T】の成海 佑月だった。

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