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長い一夜 3

 目的の雑居ビルへと足を踏み入れ、須藤は事務所のドアノブを握った。抵抗なくドアは開き中へ入ると、佑月は机に突っ伏していた。  須藤が近づくと、柔らかな髪が上質なシルクのようにさらさらと揺れ、小さな顔が露になる。  白皙の頬にうっすらと朱が差す美しい顔。  少し潤んだように見える目に、僅かに開いた魅惑的な赤い唇。  今すぐ貪りたくなる衝動を堪えなくてはならないほどに、須藤は佑月の全てに参っている。  須藤は今は我慢だと、佑月の髪を撫で、きめ細かい頬を愛でるように指を滑らせた。 「お帰りはないのか?」 「お、お帰りなさい……」  緊張しているせいもあるのか、それはとても小さな声だったが、須藤の耳にはしっかりとその声が届く。  そして佑月の頬は更に赤みが増し、熱くなっている。 「そんな顔、他の人間には絶対に見せるなよ」 「ど、どんな顔ですか」  本人には何度も言ってきたが、自覚をしない。  照れくさそうに、頬を火照らす佑月を見れば、どんな男でも堕ちてしまうということを。

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