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◇  眠れぬ夜が明けた。佑月が自室のベッド上で茫然と胡座をかいていると、ドアが無機質な音を立て開いた。 「仁……」 「やっぱり寝られなかったんだろ? 俺と一緒に寝ておけば朝までぐっすりだったものを」 「それ、半分気絶だろ……」  夜中に通過した台風。タワーマンションのここはよく揺れた。  本当は何度も須藤の部屋へ駆け込みたいという思いはあった。だがいい歳をした男が、台風が怖いから一緒に寝てくれなど言える訳がなかった。  その時、みしりと異音がした。佑月は咄嗟にベッドから飛び降り、須藤の逞しい胸に飛び込んだ。 「また!?」 「大丈夫だ。もう台風は通過した」  宥めるように須藤の大きな手が佑月の背中を優しく撫で下ろす。たったそれだけで、佑月の不安定な心が落ち着いた。  意地を張らず一緒に寝ておけば良かったと秘かに後悔もした。  そして須藤に部屋へ連れられ、佑月はぐっすり眠ることが出来た。愛と言う名の気絶の中で♡ END

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