23 / 74

長い一夜 5

 そうして暫く須藤が黙っていると、佑月の緊張が更に増していく中で、何か苛立ちの空気を放つようになった。  須藤は内心でほくそ笑む。  これで少しは緊張が解けていくだろう。  案の定、シャワーから出てきた佑月の苛立ちは更に増している。ここでも須藤はわざと佑月には構わずシャワーへと席を立つ。  きっとその鬱憤は酒を飲んで晴らすのだろうと想像するだけで、須藤は楽しかった。 「ちょっと、一体何なんだよ!」  ついに辛抱たまらずといった(てい)で、佑月が須藤の前へと大股で歩いてくる。  そして手首を掴み、引っ張り上げる佑月に、須藤は少し驚いた風を装い腰を上げた。  細い肩を僅かに怒らせる佑月の後ろ姿。  それを見ていると、須藤の胸の奥で何か温かいものがじんわりと宿るのを感じた。  それはここ最近、佑月と接している時に、ふと沸き上がる感情であった。  初めこそは佑月のことは自身の傍に置いておきたいという、強い執着心と言ったものだけだった。  人に対して胸が温かくなったりと、心を動かされるなど、須藤には決して無い感情(もの)であったからだ。

ともだちにシェアしよう!