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【佑月birthday SS②】
「君、ユヅキって言うのか。こんな美人初めて見たな」
サナエを挟んで爽やかな笑顔を見せてくる男を改めて見ると、正統派イケメン俳優のように整った顔立ちをしていた。しかし最初に感じたように、何か独特な空気を纏っている。須藤と似ているようで似ていない。一般人にはない空気は、佑月に警戒心を与える。
「あらぁ~金森 さん。佑月ちゃんはダメですよぉ~」
「何でダメなんだ?」
そう言いながら、サナエに金森と呼ばれた男はスツールから腰を上げると佑月の方へと歩いてきた。そして流れる動作で佑月の隣へと腰を下ろす。
「何でダメって、ダメなものはダメなんですぅ」
サナエが忠告するが、金森にはその声が届いていないのか、佑月へと熱い眼差しを向けてくる。
「なぁユヅキ。この後飲みに行かないか? 上手い酒を出す店があるんだ」
断られる事が頭に全く無いことがよく分かるほどに、金森は佑月の腰に腕まで回してくる。直ぐにその腕を外したかったが、こういう男は扱いを間違えると後々面倒な事になる。だから佑月は少し腰を引き、離してくれと態度で訴えた。
「すみません。まだ仕事もありますので」
「仕事? 今はオフなんじゃないのか?」
怪訝そうに眉を寄せつつも、金森は佑月の腰を逃がさないと言わんばかりに、更に引き寄せてきた。つい顰 めそうになった顔はどうにか苦笑いで留めることが出来たが、佑月の内心は苛立ちで爆発しそうであった。
「違いますよぉ。佑月ちゃんはお仕事でここに来てもらってるんです。だから金森さんお願いします。佑月ちゃんのことは諦めて下さい」
少し口調を変えたサナエが佑月の腰に回された金森の腕を外そうとした。だが金森の剣呑な目付きに、サナエの動きは止まってしまった。
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