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【佑月birthday SS ⑤】

「佑月、下がっていろ」 「下がらない」  首を振る佑月の頬を須藤は宥めるように撫でながら「言うことを聞け」と言う。このまま須藤が撃たれるなど、考えただけでも卒倒しそうだと言うのに、須藤は驚く程に落ち着き払っている。 「いい子だから、後ろへ下がってるんだ」 「っ……仁!」  須藤の力強い腕が佑月の腰に回され、二人の間から引き離される。そしてそのタイミングでサナエが佑月を引き取り、逃がさないようにとがっちりホールドしてきた。 「サナエちゃん離してくれっ」 「ダメよ! 絶対に離さないわ」  サナエはガチムチな体型をしているため、佑月などどうしたって抜け出すことは不可能だ。しかしこの状況を黙って見ているなど出来ない。気が狂ってしまいそうであった。 「おいおい、こんな状況の中で堂々とイチャイチャしないでくれないか? ほんと、胸糞悪ぃな……」  ハンマー式の銃ではないようで、直ぐに撃てる状況か不明だったが、トリガーに金森の人差し指がかかった。これで本当にいつでも撃てる準備が出来てしまった。 「やめろ!」  悲鳴のような佑月の叫びが上がる中、何を思ったのか須藤が更に一歩と金森へと距離を縮めた。金森は一瞬肩をビクつかせ、足を僅かに後退させたが、佑月は須藤の行動に発狂してしまいそうになっていた。 「仁! 何してるんだよ!」

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