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【佑月birthday SS ⑥】

「そんな震えた手で俺が撃てるのか?」  佑月が叫ぶ中で須藤は更に金森を挑発などしている。信じられない須藤の言動に佑月を含め周囲の者は息を呑む。 「仁! 頼むから挑発しないでくれ! 俺を置いて死ぬつもりなのか!?」  佑月の悲痛な叫びに須藤が佑月へと振り返り、優しげな笑みを見せた。佑月を背後から拘束しているサナエ、そしてママらが驚きの吐息を零す。須藤にもこんな表情(かお)が出来るのかと、心底から驚いたに違いない。 「俺がお前を置いて死ぬわけがないだろ。俺が撃たれる前に、こいつが先に死んでいる」 「は? オレが先に死ぬだと? どう見ても貴様の方が不利だろうが。カッコつけてんじゃねぇよ!」  須藤の更なる挑発に、金森は顔を赤くさせ激昂する。 「だったら早く撃て」 「う、うるせぇよ。オレに指図するな」  手に汗をかいているのか、滑るグリップを何度か持ち直している。その僅かな隙を須藤が突く。 「ぎゃあぁっ!!」  金森の悲鳴と同時に、身体の芯から震えが走るような鈍い音が店内に響く。そしてフロア内の空気が一気に凍りつく。その中須藤一人は涼しい顔でフロアに落ちた金森の銃を拾い、そしてその銃口を金森へと向けた。  金森は力なくぶら下がった右腕を激痛に苦悶しながら押さえ、銃口を凝視した。  須藤の動きは本当に素早かった。相手の呼吸をしっかり読み、一瞬の隙で金森の腕を捻り上げてそのまま骨を折ってしまう。何の躊躇いもなくだ。こういう姿を見ると、須藤は決して善人とは言えないのだったと改めて佑月は思い出させられた。

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