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【佑月birthday SS ⑦】

「俺に銃を向けたんだ。生きて帰れると思うな」  金森の眉間に銃口が押し付けられたのが目に入り、佑月は弾かれたようにサナエの腕を振り払う。サナエもそれを止めることなく佑月をすんなりと解放してくれる。佑月は直ぐに須藤に駆け寄り、その腕を掴んだ。 「仁、それだけはやめてくれ、頼むから」  佑月が懇願の目を向ける。しかし須藤の冷酷さながらの漆黒の目は佑月を映すことなく、金森に据えられたままだ。 「仁!」  佑月が銃を持つ須藤の腕を揺さぶると、絶好のタイミングだと言わんばかりに、金森がダッシュした。脱兎のごとく店から出ていく姿を見て、驚きながらも佑月は内心でホッと息をつく。店内のレディらも強ばっていた身体から力を抜いている。  本当に恐ろしく緊迫した時間だった。須藤なら躊躇いもなく金森を撃っていただろう。店にも多大な迷惑を掛けてしまうところであったが、一人の人間の命が失われずに済んだことが何よりも佑月をホッとさせた。 「佑月ちゃん……ごめんなさいね。あたしがもっと金森さんにきつく言っておくべきだったわ……」 「ううん、サナエちゃんは全く悪くないよ。それよりもあの金森って男……」 「東坂会の若頭だ」  須藤がそう答えながら、金森の銃の弾を抜いている。 「東坂会……」  やはりヤクザだったのかと佑月が零すと、ママが申し訳なさそうに須藤へと頭を下げた。 「須藤さん、本当に……何て言ったらいいのか。ご迷惑お掛けして……何より佑月くんをしっかり守れなくて申し訳なかったです」 「ママ、俺こそもっとしっかりしなきゃならなかったんだ。だからママが謝る事じゃないよ」    皆が自分のせいだと責める中、須藤はママを一瞥してから佑月へと複雑そうに眉を寄せて視線を移した。佑月に言いたい事がたんまりあると言った顔だ。

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