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【佑月birthday SS ⑧】

 佑月はこの後お灸を据えられるのではと内心ビクビクしながらママへと口を開く。 「東坂会っていうのは、もしかしてここ【carino(カリーノ)】の……」 「ええ、バックに付いてる組織よ……」  ママが情けないと言った様子でため息をこぼす。だがバックに付いている組織の人間、しかも若頭となると後々面倒な事になるのではと佑月が肝を冷やしたとき。須藤が弾を抜いた銃をカウンターへと置いた。 「心配しなくても、組織の人間が何かしてくることはない」 「なんでそんな事が分かるんだ?」  佑月の内心を直ぐに読み取る須藤は流石だと感じながら、堂々と言い切ってしまうのは乱暴ではないかと佑月はつい口を挟む。 「自分の恥を晒すことにもなる上に、俺が関わったとなれば大人しくせざるを得ないだろ」 「あ……そっか……」  須藤には強大なバックがついている。日本最大の指定暴力団、原口組がついている事もあるが、とにかく各方面、あるいは各国と須藤のために動く組織は多い。そして何より須藤自身の組織力も秀逸だ。 「須藤様に盾突くという事は自分の人生を終わらせる覚悟でないとよ。こんな事が会長、組織に知られたら、きっと金森はあっさりと切られるわ」  サナエは我が事のように胸を張って言う。  佑月は改めて隣に立つ恋人を見上げた。まだ三十代という若さでありながら、裏の繋がりの広さは一体どのようにして繋いできたのか。末恐ろしい男だと、その美貌に魅入っていると切れ長の美しい目が佑月へと向く。目が合うと佑月の鼓動が僅かに跳ね、頬も少し熱くなる。まるで恋する初心な乙女だ。 「それよりも、佑月」  そんな佑月の胸中など知らぬと、須藤の声音は少し低い。

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