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【佑月birthday SS ⑩】

 外へ出ると流石に十二月の夜は冷え込む。一気に身体から熱が奪われていく。佑月は腕に掛けていたコートを広げ羽織った。 「今朝、仁の話を聞いてなかったことは本当に悪かったと思ってる。すみませんでした」  佑月は律儀に須藤へと頭を下げる。須藤はため息を吐きつつ、佑月の背中へと回した腕で自身へと引き寄せる。 「とにかく車に乗れ」  人が沢山歩く狭い道路に、音もなく闇に溶け込みながらも存在を存分に主張するマイバッハが現れた。通りを歩く者らは羨望の眼差しを向けている。  滑るように佑月の目の前に止まり、真山が直ぐに降りてこようとする。しかし須藤がそれを手で制し、自ら後部座席のドアを開けた。佑月を先に乗せ、須藤が乗り込むと車は緩やかに走り出す。 「で? 何か弁明でも思いついたのか?」  須藤のそのセリフに真山が心配そうにルームミラーから窺っている。佑月は少し気まずいながらも首を振った。 「弁明じゃない。今朝俺がうわの空だったのは仁のせいだって思い出したんだよ」 「俺のせい?」  心外だと須藤の声が言っている。佑月はそんな須藤を睨む。 「そうだろ。朝までめちゃくちゃにされた上に、更に車ん中でもベタベタと俺に触ってきて。話なんか頭に入るわけないだろ」 「……」  擦られ過ぎて痛い性器を〝労わってやる〟だとか言って揉んできたり、事務所に着くまで飽きることなく頬や瞼、唇にキスまでしてきて、一体どうしたのだと反対に心配までした。 「触りたいから触ったまでだ。何か問題でもあるのか」  開き直った。

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