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【佑月birthday SS ⑪】

「……ドヤられてもさ……。別に俺だってイヤなわけじゃないけど、でも普段はあんなにベタベタしないのに。こっちは色々と疲れてんのに、そんな時に話し掛けられても頭に入らないっていうかさ……」  〝色々〟を強調しつつ、小学生が拗ねたような喋り方だなと、佑月は少し恥ずかしくなるが、須藤にはキツく言えない不甲斐なさ。しかし文句だけは言っておきたいのだ。 「今日はお前の誕生日だから、早めに仕事終わらせて迎えに行くと言ったんだ」 「え……」  佑月は須藤の顔を凝視しながら目をしばたたく。そして意識すると頬が徐々に熱くなってくる。 「覚えてくれてたのか……」 「当たり前だろうが。それがどうだ。お前は人の話は聞いてない。挙句に男に口説かれてたな」 「いや、ちょっと待って。話を聞かなかったことはちゃんとさっき謝っただろ? 男のことは俺は悪くない」  前に真山がいるため、あまり大きな声も出せず佑月はボソボソと言う。 「少し目を離すと、ろくでもないな」  今日の須藤はやけにネチネチとしている。今朝からやっぱりおかしい。情緒不安定なのかと佑月は少し心配にもなってきた。 「仁」  佑月はいつもより少し甘えた声を出して、須藤の傍へと身体を寄せた。その絶妙なタイミングで真山が後部座席との間を仕切った。胸中で真山に礼を言いながら、佑月は須藤の胸元に手を滑らせるように置いた。 「早く二人きりになりたい」  須藤は少し驚いた様に片眉を僅かに上げつつも「あぁ、そうだな」と佑月の腰を抱き寄せてきた。

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