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【佑月と須藤と真山と ①】

 今朝も尻と腰の痛みに佑月は目を覚ます。相変わらず須藤はねちっこいくらいに濃いセックスをする。抱く回数が増えてくると、普通は落ち着くと思うのだが、須藤の場合は落ち着くどころか益々と激しく濃くなっていく。昨夜は落ちる直前に、二週間ほどの禁欲生活をさせたいと強く願ったものだ。 「はぁ……一回掘られる側になってみたら、この辛さが分かると思うんだよな」  佑月な隣で気持ち良さそうに寝ている須藤の鼻を、軽く摘んだ。 「ん……」 「ヤバっ!」  佑月は咄嗟にシーツを頭から被った。次にくるであろう衝撃に備えていたが……。 (あれ……?)  いつまで経っても反応がないため、また寝てしまったのだろうかと、佑月はそっとシーツを目の下まで下ろした。 (っ! 起きてる!)  が、何か須藤の様子がおかしい。  仰向けの状態で、視線が妙に定まらずウロウロしている。眉間のシワもかなり深い。 「……仁?」  佑月が名前を呼ぶと、須藤は幾分驚いた様子でこちらに顔を向けた。そして数秒ほど佑月を見つめた須藤の目が、徐々に見開かれていく。 「え……な……」  今度は驚愕の表情になった須藤は、慌てて上半身を起こした。これはどう見ても須藤は狼狽している。  こんな須藤を見るのは初めてだった。いや、須藤は何があっても、他人に感情は悟らせない鉄壁の無表情を貫く男だ。それなのに一体須藤に何があったのか。  もしかして悪い夢を見て、混乱でもしているのだろうかと佑月は心配になり、上半身を起こして須藤の裸の背中に手を触れた。  瞬間、須藤が反射的に上半身を捻り、佑月の手を拒絶した。行き場を失った右手を、佑月はショックのあまりに呆然と見つめるしか出来なかった。 「あの……」  須藤が佑月へと声をかけた時、ナイトテーブルにある須藤のスマートフォンがバイブで着信を知らせてきた。

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