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【佑月と須藤と真山と ④】

 佑月が名を呼ぶと、真山の顔が少し綻び、唇の右端が少し上がった。  須藤も真山も表情筋が死んでいるのかと思うほどに、常に無表情だ。だから少しでも表情が加わると、本当に魅力的で、向けられる佑月は嬉しくなるのだ。  でも最近の真山は、佑月の前で朗らかな表情(かお)を見せることが多くなってきたが。  須藤はと言えば微笑むとき、右の唇の端を上げる癖がある。外見は真山だが、中身は須藤なんだと強く感じることが出来た。 「直ぐに分かってくれるとは、さすが佑月だな」  真山(須藤)はとても嬉しそうに、何の躊躇もなく、感情のまま佑月を抱きしめる。だが佑月はかなり複雑だった。 「あ、あのさ仁、ごめん。ちょっと離してくれないかな」 「何故だ」  このままキスでもしてくるのではないかと言うくらいに、真山(須藤)が顔を近付けてくる。余計に佑月は慌ててしまう。 「何故って……。いいですか、仁さん。貴方はいま外見上は真山さんなんです。それがどういう意味か、お解りですか?」  須藤(真山)はいつの間にかバスローブを着ている。その須藤(真山)を見つめてから、目の前の真山(須藤)を見る。佑月にとってはどちらも愛してる須藤だ。中身も外見も全て愛してる。  しかし真山の中に須藤がいると分かっていても、触れられるとなるとやはり身体が強ばってしまうのだ。  真山(須藤)は佑月の言葉が腑に落ちたようで、真山の顔で忌々しそうに眉根を寄せた。 「そもそも何でこんな事に……? 真山さん、大丈夫ですか?」  佑月は須藤(真山)を気にかけ、声をかけた。すると須藤(真山)はやっと佑月を見てくれ、ベッドから下りてきた。 「成海さん、ボス、申し訳ございません。さすがに私もなぜこの様な事になったのかは存じ上げません。昨夜は確かに自室で休んだはずなのです。しかし目が覚めると……」  ここで佑月を見た須藤(真山)だったが、気まずいのか直ぐに目線を外してしまった。  そりゃ目を覚ましたら、突然佑月が目に入り、しかもお互い全裸など、処理出来ない情報だらけで須藤(真山 )は大いに戸惑っただろう。 「お前が謝る事ではないが、確かに何故こんな目に遭っているのか全く分からんな。これでは佑月に触れる事も出来ない」  真山(須藤)はそれが一番困ると不満をもらした。

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