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【佑月と須藤と真山と ⑧】

「おかえりなさい」  夜十時を回った時間。須藤と真山が帰ってきた。  真山が須藤の前を歩く様子に、数時間ぶりに二人を見た佑月は一瞬驚いてしまう。 (そうだ……逆だ。逆! はぁ……なかなか慣れないな) 「ご飯食べますか?」  気を取り直して、佑月は笑顔で二人に訊ねる。 「あぁ、食べる」  真山(須藤)の返事に佑月は頷き、直ぐにキッチンに入り三人分用意した。須藤が食事をしていないということは、必然真山もしていない。遠慮気味な真山だが、真山にもここでは寛いで欲しい。慣れない他人の身体で、二人とも顔には出さないが相当疲れているはずだから。  今夜は腕によりをかけて和食料理を作った。美味しそうに食べてくれる二人を見て、佑月も仕事の疲れが飛んでいく。 「ご馳走様でした。とても美味しかったです。洗い物は私にさせて下さい」  須藤(真山)が食器を運んでシンクへと置く。佑月はギョッとあからさまに驚いてしまった。 「ほ、本当ですか? お口に合って嬉しいです。でも洗い物は大丈夫です。これがしてくれますので」  佑月は須藤(真山)にビルトイン食洗機に皿を並べて見せた。 「なるほど。家事をしないものなので、キッチン関係は疎くてすみません」 「俺は料理が好きだからキッチン関係が強いだけです。それにこれはかなり楽をさせてもらって──」 「真山」 「はい、ただいま」  真山の声で、真山を呼ぶ。どこか不機嫌な声色は真山の声でも伝わってくる。須藤(真山)はすぐさま、主の元へと参じた。佑月はこっそり肩を竦めて、残りの皿をビルトイン食洗機に収めていった。  きっと真山と二人でコソコソ話していた事が、須藤にはお気に召さなかったのだろう。 (まだ真山さんはマシな方だけど、(はやて)の時は機嫌レベル最悪だしな)  いい加減話すくらいは、どんと構えるくらいに鷹揚な心を持ってほしいものだと、そう願う佑月がいた。  深夜に佑月は珍しく尿意を感じ、むくりとベッドから起き上がった。隣を見れば真山(須藤)が寝ている。まだ慣れずに一瞬ドキリとしてしまう。  寝る前は少し揉めた。誰が何処で寝るかを。もちろん須藤は佑月の隣を譲らない。しかし見た目が真山のため、どうしても佑月が落ち着く事が出来ないため、須藤(真山)にも同室してもらう事になったのだ。  須藤(真山)にはソファベッドを使用してもらっている。佑月は寝ぼけ(まなこ)の中トイレに行き、用を足すと欠伸を何度もしながら手を洗って部屋に戻った。 (あれ……仁。いつの間にかソファで寝てる)

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