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【佑月と須藤と真山と ⑪】

「悪いが、俺たちが元に戻るまではここで寝てくれ」 「分かった」  佑月は素直に頷いた。  お互い暫く見つめ合っていたが、真山の眉が徐々に寄っていく様子に、佑月は「おやすみ、仁」と言って、布団に入った。  きっと須藤は自身の気持ちと葛藤していたのだろう。こういう時は早く切り上げた方がお互いのためだ。佑月だってキスがしたくてたまらない。姿は真山だが、肌で須藤を感じてしまうからだ。 「おやすみ」  須藤はそう言って部屋から出て行った。  三人ともに眠れない夜を過ごすことになった──。 「おはようございます」  佑月はリビングのソファで姿勢よく座る須藤の身体を見るや、相変わらず一瞬ドキリとしたが、直ぐに冷静になる事ができた。  冷静……とは言い過ぎだ。本当は真山に対して佑月は、多大なる迷惑をかけた事と、醜態を見せてしまった事で血の気が引いたのだ。  昨夜、寝惚けていたが、自分が取った行動、言った言葉は鮮明に覚えている。 ──まだお尻痛いから、今夜は優しくしてくれよ。 ──優しくしてくれないと、さすがにお尻が壊れる。 (う……穴があったら入りたい……)  真山のことだから態度には出さないだろうが、内心ではドン引きしているかもしれない。  須藤と恋人なのだからセックスをしてるくらいは知っているだろうが、露骨な表現は聞きたくなかっただろう。申し訳ない思いと、とんでもない羞恥との板挟み状態だ。  そして佑月が最大に気にしていることは、真山の心身だ。昨夜の須藤はかなり怒っていた。ボスによる厳しい叱責があっただろうと思うと、これもまた佑月には申し訳なさすぎた。 「成海さん、おはようございます」  須藤(真山)は直ぐに腰を上げ、佑月に頭を下げた。顔に痣がないのは当然だろうが、見えない部分を殴られている可能性がある。腰を上げる時、顔の表情は変わらなかったが、真山も須藤も常に無表情だから分かりにくい。 「あの、真山さん。昨夜は本当に……本当に大変失礼しました。あんな醜態を晒してしまって。申し訳ございません」  佑月は誠心誠意、真山へと頭を下げた。 「成海さん! 顔を上げて下さい。成海さんが謝られる事は何一つございません。このお身体は確かにボスのお身体なのですから。成海さんがボスだと思うのは当然のことです。ただ中身が私でして……そこは、本当に申し訳ございません」 「そんな、真山さんも謝らないでください。こんな事言うのは不謹慎ですが、入れ替わったのが真山さんで本当に良かったです。もしこれが、どこの誰だか分からない人だったらと思うと……」  ここで二人は顔を見合わせて、身を震わせた。そして噴き出すように静かに笑い合った。  昨夜須藤は、真山にあんな恐ろしい声で脅していたが、珍しくキツく叱ることはなかったという。もちろん手も上げていないようだ。  真山が佑月に対して乱暴に出来ない事は分かっていることだし、不可抗力な面がある。逆にあの場で佑月を突き飛ばす真似をしていたら、それこそ無事では済まなかっただろう。

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