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【佑月と須藤と真山と ⑭】

「ごめん……仁……ごめん」  触れたいのを我慢している須藤の前でなんて事をしてしまったのか。須藤の視線で自慰を始めようとしてしまったことへの罪悪感に、佑月は苛まれた。  酷なことをしてしまった。真山(須藤)の下腹部は大きく膨らんでいる。 「何を謝ってるんだ?」 「だって……それ」   須藤は真山の身体を見下ろして、少し苦笑いを浮かべた。 「あぁ、これか。まぁ確かに真山の身体で抜くのはな……さすがに居た堪れないな。このまま放っておけば治まるんだから、そんなに悲観する事でもないだろ。それよりも」  パジャマのボタンを留めていると、真山(須藤)が何か意味深な視線を佑月に投げてきていた。 「それよりも?」 「俺は最後まで見たかったんだがな」 「え……いや、だって……」  佑月は失礼だと頭の片隅で思いながらも、真山の股間を凝視してしまう。こんな風に自分の知らぬ所で、人に見られたくない、知られたくない最もデリケートな事を晒されて……。自分なら絶対に嫌だ。一度自分は真山に殴られるべきだとさえ思う。 「今更だろ? もう勃ってるんだ」 「そうだけど……やっぱりごめん。俺から仕掛けたのに勝手言うけど、見るのも触るのも、やっぱり仁自身じゃないと……」 「そうだな」  須藤はそう言って涼しい顔で、ロックグラスに口をつけた。 「おやすみ……」 「おやすみ」  佑月は部屋へと戻り、扉を閉めた瞬間その場で蹲った。 「最低だ……俺。メンタルケアどころか、更に追い討ちかけて。仁を追い詰めた。何やってんだよ……」  頭を掻きむしってから、佑月はその場で足を投げ出し、頭を扉に預けた。自責の念に駆られながら反省の一夜を過ごした──。  あの夜から三日経った。須藤はあの日の翌日から表面上はいつも通りだ。しかし内に秘めたる想いが、今にも爆発しそうだと佑月は感じた。  三日前に佑月が余計な事をしてしまったばかりに、拍車をかけてしまった。  常日頃から、須藤は佑月と一緒にいる時は必ず触れてくる。キスをしたり、指に触れていたりと、無表情の鉄仮面なくせに、愛情表現は惜しみなく表してくれる。  今では佑月も一日に一度は須藤に触れていないと、寂しいとまで感じてしまう。  真山もそんな二人の板挟みで、仕事の面でも大変だというのに、色々と重圧がかかっている。  元に戻ったら、真山には休日を与えてはと佑月は須藤に提案した。  さすがは出来るボス。言われなくてもそうすると言い、佑月はホッとしたものだった。

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