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第5話
「ハァ、ハァ…ッ」
山を駆け上がり息を切らしてもなお走り続ける一之介…
そのまま小高い岩の上まで来て仰向けに寝転がる。
「ハァ、ハァッ、っよかった…」
「元気だった、たけ丸…、元気だったな…」
息を切らしながらも笑みがこぼれ、さらに涙が零れ落ちる。
「はー、よかった…」
一之介も、この3年間、ひと時たりともたけ丸のことを忘れたことはなかった…
あの日別れてから、今までずっと…
「立派になりやがって…もう、俺じゃ手が届かねぇよ…」
嬉しさと悲しさが同時に襲ってきて…
「……畜生!」
くくくっと笑いがこみ上げてくる。
「あー、畜生!」
「でも、これでお別れだ…」
もう、俺が守ってやらなくても大丈夫だ。
たけ丸は、俺がいなくてもあんなに立派になれたんだから…
むしろ、俺がいたら、アイツの足を引っ張っちまう。
だから…
たけ丸のことは、忘れる…
って忘れられる訳ないだろう、何年想ってきたんだ…
あぁ、痛い、胸が痛い…
必死だったな、アイツ…
俺のこと、覚えていてくれた…
嬉しいよな…そりゃ嬉しいだろ!
あーぁ、もう訳分からない。
取り留めのない思考がぐるぐると回って、落ち着くまでにかなりの時間を要する一之介だった。
寝床にしている橋の下まで戻って来たのは、辺りも暗くなってから、火打ち石で明かりをつけ一息つこうとした時。
寝床に何者かが寝ていることに気付く…
「だ、誰だ!?」
ろうそくの灯りだけでは、薄暗く顔が見えなかったが…
「一之介…良かった、戻ってきた」
「っ!!」
「一之介…」
「城に戻らなかったのか!?」
つい話しかけてしまう。
「…うん」
以前の話し方に戻っていて安心するたけ丸。
「馬鹿野郎、なんで…」
「僕、ずっと、ずっと一之介に会いたかったんだ、でも小姓の任が解けるまで、城から一人で出れなくて…遅くなってごめんなさい」
「……」
「怒ってるからあんなこと言ったんだよね」
「……」
「忘れてなんかないよね?」
「……っ、送るから城へ帰るんだ」
「ッどうして?」
「お前はもう、殿様のものだ、こんな薄汚いところへ来ていい身分じゃない」
「…一之介、」
「もう、二度とここへは近づくな!」
「嫌だ…いやッ」
首を振り、抱きついて来たかと思うと、いきなり一之介の股間を弄り、いちもつを表に出してしゃぶり始める。
殿様の相手をして、三年間で身についた手管…
一之介を喜ばせたくて…
「……ッ!何を、んっ、」
「……っふ、」
根元を摩りながら…淫らな音をたててしゃぶり快感を煽っていく…
「っ、やめッ、ハァ、っ」
激しく口で扱かれ、熱い想いがかきたてられる。
「ァ、駄目だ…離れろッ」
無理やりにでも引き離し…
行動を止める。
「…一之介、」
「……もう、あの頃とは違う、お前と俺とじゃ身分が違うだろ、早く城へ戻るんだ」
上がる呼吸を抑えつけ、
着物を整え、たけ丸に背を向ける。
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