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11. 人殺し2

翌日、花壇の水をあげるのについて行くと申し出た探偵を珍しい事もあるものだと不思議に思いながらも、2人連れだって一階へ下りた。 「青山もお水一緒にあげようよ」 何もしないのでは暇だろうと差し出したじょうろは、案の定突き返された。 何をしに来たんだよ、お前は。 「ついていくと言っただけで、共に水をやるとは一言も言っていないが」 「別に何も言ってないけど」 「君はすぐに顔に出るから」 フッと口許を弛めると、探偵は腕を組んで壁に寄りかかった。 花壇に水をあげていると、カフェの店長がテラス席へ出てきた。 挨拶を交わして、少しだけ世間話をする。 「あれー、珍しいですね。青山探偵が昼間から外に出てる~」 「そうなんですよ。なんでかついて来るって」 「愛されてますねっ、一条さん」 「愛…っ!?どうしてそうなるんですか!」 「あっはっは、近所でも有名ですよー。毎日仲良くお買い物してて、まるで新婚さんみたいね~って」 笑い事じゃないよ、もう。なんでそんなことで有名になっちゃってるんだよ…。 「んじゃ、私戻りますね。旦那様によろしく」 「えっ、うそ!僕が奥さんなんですか!?」 「だって一条さん、可愛いもーん」 「僕のが年上なのにーっ!」 笑いながら戻っていった彼女を見送ってから、探偵の元へ戻る。 「何を騒いでいるのだ、君は」 呆れた目を向けられた。 「だって店長さんが…」 「それより一条君」 人の言葉を途中で切って、顔を寄せてくる。 「振り返らずに確認し給え。昨日会ったのは、あの道向こうの街路樹の下の男か?」 「えっ?」 思わず振り返りそうになると、両頬を掌で挟まれた。 て、振り返らないでどうやって確認すればいいんだ。 「わ…かんない。見えないもん」 「横目で見給え」 「横目…」 少し体をずらして、探偵に言われた方を必死に窺う。───と、 「あ、うん。あの人だ」 探偵は小さくそうかと頷くと、僕の肩に手を添えビルに戻るよう促した。 良く分からないまま、炎天下の表を後にする。 ビルへ一歩足を踏み入れると、探偵はそこで立ち止まり密かに背後を窺った。 「一条君」 呼び止められて、足を止める。肩に触れた手に、体をくるりと半回転させられた。 「私の腕を掴んで、少し上を見て背伸びをして」 「え?なんだそりゃ」 「いいから」 理解不能の言葉に従って、探偵の腕に両手で掴まる。 で、なんだ?少し上を見て、背伸びだっけか。 「これでいいの?」 「ああ、上出来だ」 探偵が背を屈めて、鼻先で囁いた。 「少しだけこのままで、何か話し給え」 「このままって…、顔近いぞ」 「これでいいのだよ」 「バカ○ンのパパか。てかお前さ、なんかいい匂いするよなー。香水とかつけてんの?」 「なんだ、口説いているのか?」 「口説いてねーよ」 純粋な疑問だよ。なんで僕が男を口説かなくちゃいけないんだよ。 「そろそろいいか…」 一人呟くと、探偵は僕の肩を押して体を離した。 「行こうか」 追い越して階段を上るから、慌てて追いかける。

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