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13. 人殺し4

そう思った僕は、探偵が留守をした日の夕方、再三止められていたに係わらず、暢気に1人で買い物に出てしまった。 前日に買い出しに行かなかったので冷蔵庫に食材が殆ど無かったから、と言うのは、言い訳にもならないのだろう。 せめて下のカフェからテイクアウトするか、探偵が戻ってから一緒に出掛ければよかったのだ。 通時よりも早い時間に出て、周囲を見まわして居ないのを確認したけれど、いつもの道を通って会ってしまったら嫌だなと道を変えて歩いていて、少し遠回りの路地─── 地面に転がる人を見つけた。 「どうしました?大丈夫ですか?」 声をかけて肩をゆすって、ずれた体の脇腹に……… 「……ぁ……っ」 急に体温が下降するのを感じた。 どうしよう……!? 気を失った男の体には、ナイフが深々と刺さっていた。 早く抜かなきゃ! 柄に手をかけて、でも…と思い止まる。 刃物が刺さっているのを抜いたら、血が噴き出して逆に危ないと聞いたことがある。 でも、僕の時は詩子ちゃんが止血してくれて……でも、僕に同じように止血できるか…… そうだ!それより先に、救急車を…… 「あ…貴方、なにを……」 女性の震える声が聞こえた。 顔を上げると、口元を押さえた女の人と目が合う。 「良かった。すみませんが──」 救急車を呼んでくれますか、と続けるつもりだった言葉は、その人の叫び声に掻き消された。 「誰かっ、人殺しーっ!!」 そして、ただの発見者だった僕は、見事に容疑者へと仕立て上げられたのである。

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